柳美里ドキュメントに決定的欠落-触れられなかった在日差別

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「虐待カウンセリング・作家・柳美里・500日の記録」(NHK)2011年5月15日22時~

   未婚の母の柳美里が小学生の長男を時々ブチ切れて叩くことに悩み、虐待の研究者(?)、東海学院大学の長谷川教授にカウンセリングを依頼した記録である。彼女の子供時代に、パチンコ屋の釘師だった父親や母親から殴られたり厳しく躾けられたり稽古事に駆り立てられたりした記憶を話すと、長谷川は「それは虐待です」という。親はそう思っていないし柳もまた虐待親の認識はなかったようだ。
   虐待する親は、本人が子供時代に親から虐待を受けた負の連鎖があると長谷川は主張する。だから、父親はそのまた父親、柳の祖父母を調べろと言って朝鮮半島に渡るのだが、そこで、父親の義姉から柳の知らなかった祖父母のことをいろいろと聞かされる。
   おのれの生い立ちや恥部を赤裸々に晒して物語り、昔流行ったデカダンな私小説家のような柳にとって、本人の子供虐待や、親、そのまた親の虐待の歴史は、まことに美味しい素材には違いなかろうが、筆者には通じないよ。何故なら、若い年代のディレクターたちはまんまと騙されても、このドキュメントに決定的に欠落した部分があるのに、答えないので感心するわけにいかないからだ。
   即ち、在日差別の歴史に全く触れられていないこと。父親が有名になりたかったのは、血は韓国でも日本人を凌駕する有名人になり見返したかったからだし、釘師しか選択の余地のなかった職業差別やその他諸々の差別が親たちの鬱屈だったのは間違いないのである。

(黄蘭)

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