エジプト民主化混迷-若者グループ分裂、イスラム原理主義台頭、軍介入の懸念

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   エジプトのムバラク政権崩壊からすでに3か月。そろそろ新しい国家のかたちが芽吹いているのかと思っていたら、出口の見えない混迷が深まっているという。

   ムバラク政権崩壊の原動力となった若者たちの「4月6日運動」が分裂寸前で、その間隙を縫うようにイスラム原理主義の「ムスリム同胞団」が存在を強め、政治の表舞台に躍り出ようとしている。

   エジプトの民主化は果たして実現するのか。国谷裕子キャスターがアラブの有力紙の編集副主幹にインタビューし、エジプトの行方を探った。

米国筋の資金提供めぐり対立決定的

   人口8000万人。イスラエルと和平条約を結んでいるアラブの大国・エジプト。その行方は中東全域に広がりを見せる民主化運動の波にも大きな影響を及ぼす。

   現在、軍の最高評議会が暫定的に政権を引き継いでいるが、今後のカギを握るのは軍、民主化運動の先頭に立ってきた若者勢力、ムスリム同胞団を中心とするイスラム勢力の3グループといわれている。

   ところが、若者の民主化推進グループは活動路線を巡って大きな亀裂が生じ、2派分裂の危機にある。1つは「政権側にも野党側にも属さず、民主主義の番人として影響力を発揮できる存在になりたい」(リーダーのアムル・アリ)と従来からの路線を固持する一派。もう1つは、「独裁者から解放された今こそわれわれの出番。政党を立ち上げ、積極的に政治に参画して自らの力で民主化を推し進めなければいけない」(リーダーのタレク・コール)という一派だ。

   それぞれ自説を掲げて、一方はインターネットや携帯電話、デモで、もう片方は集会などで市民に直接アピールしている。主張を聞いていると、ご説ご尤もな面があり、足して2で割れば分裂の危機など避けられそうなのに、4月中旬に亀裂を決定づけるニュースが舞い込んだ。

   米ニューヨークタイムズが、米政府の関係する団体がアムル率いる一派に資金援助していたことをスッパ抜いたのだ。ムバラク政権を支持してきた米国から、資金援助を受けるとは許せない。反対派は「一部のメンバーはエジプトにとっていま何が大切か分かっていない。われわれは外国からの資金援助など一切受けてはならない」(リーダーのタレク)と批判。亀裂は修復不可能になっている。

サダト大統領暗殺グループのリーダー釈放

   こうした中で、弾圧から解放され急速に存在感を増してきたのがムスリム同胞団。4月末にいち早く「自由公正党」という政党を立ち上げ、秋の議会選挙で「半数の議席獲得を目指す」と宣言した。さらに、ムスリム同胞団の勢いにあやかろうと他のイスラム組織も便乗して活発に動き出している。

   その一つが「サラフィスト」。厳格なコーランの解釈に基づいてイスラムの原点回帰を唱えている団体だ。1981年に起きたサダト大統領暗殺事件は、武装闘争を掲げるこの中の一派が起こしたとされており、30年間服役していた犯行グループの元指導者、アブドル・ズマルは、ムバラク政権崩壊で釈放されている。

   それに呼応するかのように、サラフィストの一部と少数派のキリスト教との衝突が深刻になっている。

9月の議会選挙も実施できるかどうか

   アラブ世界最大の新聞「アル・アハラム紙」のヤヒヤ・ガーネム副編集主幹はエジプトの今後をこう見る。

「革命後の混乱のかなで、今でも危機的状況が続いています。ほとんどの人々は自分たちが達成したことがどれほど画期的で、どれほど重要なものを手に入れたか十分理解していない。これが混乱が止まらない理由の一つだと考えています。しかも、人々は間違った方向に動き出しているように見える。過剰なまでの変化や改革を求めるようになって混乱が返って深まっている。軍の最高評議会は『国民が選んだ議会に早く手渡したい』と表明していますが、最悪のシナリオは軍が本格的に介入して、軍による支配が確立してしまうことです。そうなれば独裁政治に後戻りしてしまう」

   民主化への試金石は9月の議会選挙だが、ヤヒヤ副編集主幹によると、「選挙がおこなわれるかどうかも疑わしい」という。民主化革命は「まだ始まったばかり」だというのだ。

モンブラン

*NHKクローズアップ現代(2011年5月18日放送「混迷エジプト 民主化の行方は」)
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