将来の病気、寿命を予測―個人DNA50万円解読ビジネス

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   唾液を簡単なキットに入れ送ると、将来起こる病気のリスク情報を50万円で教えてくれるビジネスが米国に登場した。DNA解読技術の急速な進歩で、DNA の塩基配列を調べることで疾患関連の遺伝子を探し出し、将来起こり得る病気の予防に役立てる時代が到来したのだ。

   しかし、知って予防できる病気ならいいが、アルツハイマー病のように、治療法が確立されてない病気も多く、リスク情報を知ったことで将来への不安を抱くことになりかねない。さて、あなたなら技術の進歩を信じて情報提供を受けるか、拒否するか。

42歳男性「75歳までにアルツハイマー発症確率50%」

   約30億ある塩基配列のDNAは、交互に繋がった鎖がらせん状に合わさっていて、鎖の間に4種の塩基が、A(アデニン)とT(チミン)、G(グアニン)とC(シトシン)と対をつくっている。この配列にはスニップ(SNP)と呼ばれる一人ひとり異なる部分があって、顔などの遺伝的な個人差を生み出し、疾患関連の遺伝子が疑われる場所だ。この膨大な個人のゲノム全情報を解読し、病気に関する遺伝子を探し出そうと、5000億円以上かけて国際共同プロジェクトが1991年から始まり03年に完了した。

   アメリカはその後も国を挙げて解読技術の向上を進め、今では30億の塩基配列を解読するのにわずか1時間20分。解読会社まで出現して、費用は一般の人も手が届く約50万円である。2年前に解読をしてもらった米スタンフォード大のステファン・クエークさんは、心筋梗塞の発症リスクが同世代男子の2・88倍、発症確率が60%であることが分かった。前立腺がんやII型糖尿病の発症リスクも高かったが、発症リスクを詳しく調べることで対策につながることも判明。クエークさんは現在、低脂肪の食べ物を中心に塩分控えめを心がけ、定期的な運動に取り組んでいる。

   一方、昨年解読してもらった42歳の日本人男性は「やみくもに人に勧めたいとは思わない」という。この男性は前立腺がんや皮膚がん発症リスクが高いことに加え、75歳までにアルツハイマー病を発症する確率が50%と出た。「100歳まで仕事をすることが目標ですから、75歳でボケると仕事ができない。しかし、それに向けて何年で何をするかがわかるようになったので、解読して良かったと思っている」という。

   人に勧めたいですかという質問に次のように答えた。

 「病気に対する考え方が違うでしょうし、やみくもに、やったらいいよとは言えない。想定していなかった病気を受け入れられない人もいるでしょう。結婚して子供がいる人にとっては自分だけの問題ではなくなる」

予想もしない「病気情報」受け止められるか

   DNA解読に詳しい北里大大学院の高田史男専任教授は、「一つのターゲットだけでなく、全ゲノム情報を見てしまうと、その中には予想もしない情報も入っている可能性があります。それをどう受け止めるか、重いことではないかと思う」と話す。

   高田教授によると、ますます実用化が進んで、今後数年の間に、1人分のゲノム情報を4分間で解読する企業が出現するだろうという。ある意味、がんの告知と似ているが、自分の子どもや親戚などに与える影響はがん告知以上かもしれない。「多くの病気は遺伝的な要因がからんでいることが最近分かってきた」(高田教授)からだ。技術の進歩がもたらす両刃の剣はいつも悩ましい。

   *NHKクローズアップ現代(2011年6月15日放送「到来!パーソナルゲノム時代」)

モンブラン

文   モンブラン
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