1日2回押し寄せる海水―復旧のメドたたない震災水没地区

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   東日本大震災では地盤沈下が広範囲に発生し、復興への大きな障害になっている。宮城県石巻市では最大で120センチ、他の地域でも軒並み50センチ以上地盤が沈み込んだ。地盤地下は津波の被害にあった沿岸部分だけではなく、内陸部にも及んでいる。国谷裕子キャスターが現状を取材した。

潮見表持って仕事や買い物

   「震災前と比べて、岩手県沿岸から千葉県にかけての600キロメートルの沿岸で地盤沈下が認められ、宮城県では海より低くなった面積が、震災前に比べて3・4倍にもなったといいます」(国谷裕子)

   宮城県の漁港・宿舞根港で、60年以上もホタテ養殖などを手掛けていた漁師・畠山民雄氏はこう話す。

「船は何とか無事だったが、岸壁が水没して船が横付けできなくなった。自分一人の力ではどうにもならない。漁はもうできないだろう」

   岩沼市の農村地帯では、「海抜ゼロメートル以下の田んぼが出現し、その復旧工事だけでも経費は4億円ぐらいが必要とされ、地元は復興を諦めている状態です」と国谷はレポートする。

   さらに、沿岸部の住宅地・渡波地区では1日2回の満潮時に冠水、トイレへ海水が逆流したり、床上まで浸水する家も多く、仕事や買い物などで外出するにも潮見表が欠かせない生活となっている。

夏に心配される「越波」

   ゲストの安原一哉・茨城大学名誉教授は驚く。

「これほどまでの広範囲にわたる地盤沈下は初めて見ました。当面の対策としては、まずは入り込んだ水を外に出すこと。そして、2度と水が入らないような対策を講じること。
今後、夏に向かって水位の上昇があるので、越波という現象が起きる可能性があります。海水が土嚢などを超えて流れ込んでくる現象で、防ぐためにはきちんとした防波堤や防潮堤が必要で、総合的な町作りの中でこれらをどう構築するかを考えなければなりません」

   安原は国谷と津波は免れたが、地盤沈下で43戸の民家が倒壊した仙台市郊外の折立地区を見て回る。

「この状態はもう地盤沈下というより、住宅地造成のための盛土が崩壊しているという状況。それが何かは分からないが、地面の中で何かが今でも動いているようです。復旧のためには、危ない盛土地域全体を最初から作り直す必要があり、個人の力では困難です」

   国谷「全国に点在する古い盛土方法による宅地造成の弱点が改めて浮き彫りとなっています。しかしながら、地盤の強度に対する調査はあまり進んでいません。しかも、自分の家が弱い地盤の上に建っていると分かっても、その対策は限られています。地盤について知りたい。でも、知ったところでなかなかどうにもならない。もどかしいところです」

   震災による水没地域で住み続けるには、排水と堤防建設を待たなければならないが、完成まで家が持つのかどうか。

NHKクローズアップ現代(2011年7月7日放送「地盤沈下が復興を阻む」)

ナオジン

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