中国共産党政権揺るがす「もの申すマジョリティー」8億人

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   高速鉄道事故を巡って、中国では政府や鉄道省などに対して、市民の間にかつてない激しい批判が起こっている。怒りの声を上げているのは、これまで改革開放の恩恵を受け、共産党政権を支えてきたサイレントマジョリティーと呼ばれる中間所得層。この中間層の政府批判は今後の中国のあり方に大きな影響を与えそうである。

鉄道事故で燃え広がったへ政府批判

   中国の一般市民が怒っているのは、早々と行方不明者の捜索を打ち切り、事故原因の究明もないままに運行再開を急いだこと。キャスターの国谷裕子はこう報告する。

「今回の事故で高速鉄道に対する信頼は完全に失われたようです。また、事故に関するマスコミの報道をその後に統制するという当局の姿勢が、さらに怒りを大きなものにしました」

   番組では遺族らに対する関係当局の横暴ぶりも紹介された。事故で弟を亡くし、なぜ事故は起きたのかと聞く兄はホテルに缶詰にされて公安当局の監視下に置かれ、事故から数日後には事故現場に監視カメラが設置されたという。これまではそうした強権で批判を押さえ込んできたが、今回は違った。

   事故で夫を失いながら、関係当局から相手にされない王恵さんが、思いあまって中国版ツイッター「ウェイボー」に当局の対応を批判する書き込みを行ったのだ。

   国谷「これがきっかけとなってネット世論の形成が高まりました」

   ネットパワーは温家宝首相を慌てて事故現場に行かせ、徹底した原因究明と情報公開を約束させた。中国を取材してきた加藤青延・NHK解説委員が中間層の不満の背景を説明する。

「天安門事件以来、中国政府は中間層の目を経済発展に導いてきました。その結果、中間層はその恩恵を受け、高速鉄道網も完成され、今や世界一の経済大国になったと誇りを持っていました。しかし、今回の事故とその後の対応がその誇りを切り裂いてしまったのです」

   中国政府の報道統制も露骨だ。当局の対応を厳しく批判してきた「新京報」は、当局の圧力を受け、1面に予定していた事故関連の記事を9面に差し替えた。しかし、これにマスコミ人たちが反発、「ウェイボー」には差し替えられる前の新京報の紙面が公開された。

ネットパワーで「大きく歴史が転換」

   「ウェイボー」で政府批判を続けている元新聞記者のハンドルネーム・五岳散人はこう話している。

「今回の事故で政府も党もネットのパワーがどれだけのものか分かったはずです。社会全体で大きな声を上げれば、中国を変えることができる。今、中国は大きな歴史の転換点に立っています」

   国谷は「中国の中間層は8億人といわれ、最大のマジョリティーになっています」と指摘、加藤が「これまで中間層はサイレントマジョリティーと言われてきましたが、今やもの申すマジョリティーに変貌しつつあります。かといって、政府や共産党が強権的な態度をとれば、自分たちの政権基盤そのものが崩壊しかねない。政府や共産党中央は大きなジレンマに陥っています」

   *NHKクローズアップ現代(2011年8月4日放送「『ネット反乱』の衝撃~中国鉄道事故の舞台裏」)

文・ナオジン

文   ナオジン
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