原田芳雄「滑稽で味わい深い初老男」18年ぶり戻った寝取られ女房…さてどうする?

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(C)2011「大鹿村騒動記」製作委員会
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大鹿村騒動記>『どついたるねん』『顔』『亡国のイージス』などの阪本順治監督と名優・原田芳雄が何度目かのタッグを組んだ群像喜劇。別れて18年ぶりに再び顔を合わせることになってしまった夫婦と、村歌舞伎上演を巡る村人たちの騒動を描く。モチーフとなった「大鹿歌舞伎」は、長野県下伊那郡大鹿村で毎年春と秋に行なわれる。

   風祭善(原田芳雄)はこの村で鹿料理店を営みながら、300年続く村歌舞伎を世話してきた花形役者だ。公演を5日後に控えた日、18年前に駆け落ちして自分の前から姿を消した妻・貴子(大楠道代)と幼なじみの治(岸部一徳)が突然戻ってくる。認知症を患う貴子がもう手に負えないと、治が返しに来たのだ。駆け落ちしたことも忘れてしまっているのに、かつて善と演じた大鹿歌舞伎のセリフはしっかり覚えている貴子。公演前日に善の相手役となる女形が大怪我をしてしまったことから、急きょ貴子が代役として舞台に立つことになる。

岸部一徳、三國連太郎、佐藤浩市、松たか子…さすがの顔ぶれ

   原田芳雄の遺作、三國連太郎、佐藤浩市、松たか子、瑛太など多彩な出演陣、特別興行につき観賞料はいつでも誰でも1000円! これだけでも観に行きたくなるだろう。その期待に応える作品だ。とりわけ、原田(亭主関白な夫)、大楠(貞淑な妻)、岸部(友人の妻を寝取るヘタレ)の三者の掛け合いはすばらしい。大鹿村には本当にこんな男女がドタバタやっているのではないかと思わせる。

   3人のまわりでは、リニア新幹線の誘致を巡る男たちの小競り合いあり、若者たちの惚れたはれたの騒ぎありで、おそらく阪本監督と原田の人徳で集まったのであろう豪華な顔ぶれが、個性溢れる役をのびのびと演じている。

   ひとつだけ悔やまれたのは、物語のクライマックスシーンの村歌舞伎の演目「六千両後日文章 重忠館の段」が、予備知識なしでは理解しづらいことだ。平家滅亡の後日談を描いた内容で、平家の落ち武者で、源頼朝を相手に大暴れする敗北のヒーロー・景清を善が、平家出身でありながら源氏の重臣・重忠に嫁いだ道柴を貴子が演じ、舞台では景清と道柴のからみがひとつの見せ場となっている。劇中でもちょこちょこ説明は入るのだが、シーン展開がはやくてややついていけなかった。

阪本順治監督の独壇場

   喜劇と呼ぶにはやや物足りないが、群像劇としてはかなり満足のいく作品。惨めで情けない人生にも、常におかしみや温かみはある。過去の阪本作品でいうと、逃亡生活の中に次第に生きる意欲を見つけだしていく中年女性の姿を描いた『顔』(2000年)と通じるものを感じた。どこか滑稽な、でも味わい深い人間の生きようを描かせたら、やはり日本では阪本監督の右に出るものはいないと再確認。その阪本作品を支えてきた原田芳雄がもうスクリーンでは見られないのかと思うと寂しい。

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