いかにも向田邦子ドラマの匂い―細部に宿るリアリティに納得

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「胡桃の部屋 第1回~第3回」(NHK)2011年8月9日22時~

   「胡桃の部屋」は向田邦子の短編である。1982年にNHKでドラマになっているが、今回は原作にない部分も加えて連ドラ化された。先日、向田邦子の没後30年で出版された「向田邦子のかくれんぼ」(佐怒賀三夫著)の出版記念会に筆者も招かれたが、テレビに関わる人たちのそれぞれの心の中で、彼女が如何に特別な存在であるかを改めて思い知らされる1夜だった。ほとんど向田菩薩様である。
   1980年代の東京、堅実なサラリーマンだった父・忠(蟹江敬三)がある朝出たきりで戻らなくなった。実はリストラされて自殺しそうな所を鶯谷でおでん屋を営む女・節子(西田尚美)に助けられる。次女・桃子(松下奈緒)は家族のために奮闘する。母(竹下景子)は過食になって精神のバランスを崩し、嫁に行っている長女・咲良(井川遥)も夫に浮気されて万引きに走る。家庭崩壊寸前である。
   向田作品は細部に宿るとでも言おうか、古いしもた屋の家具調度や正月の風景などに彼女らしい匂いがする。例えば、長女が実家に帰ってきた場面で、桃子は父母のことで悩み、咲良は夫の浮気で悩み、お互いにシリアスな鬱屈を抱えているのに、一緒に食べた「蜜柑がすっぱい」とケラケラと笑う。リアリティがある。現実に体験することで、身内の葬式や通夜でも、ふっとおかしい会話に笑い転げたりすることはよくある。向田邦子の観察眼の鋭さと言えようか。美人女優だった竹下景子の、老けた修羅顏が最も強い印象を残す。

(黄蘭)

採点:1.5
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