大震災でメッセージ!12か国21人の映画監督が撮った3分11秒

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   東日本大震災から半年目の9月11日(2011年)、世界遺産である奈良・吉野の修験道の総本山、金峰山寺で上映会があった。世界12カ国の21人の映画監督が、3月11日に合わせて3分11秒の作品を寄せたものだ。

   呼びかけたのは、河瀬直美監督だった。震災の後、仙台から「3分11秒」のプロジェクトへの参加を求められ、世界への呼びかけを思いついた。浮かんだのが 「A Sense of Home(家という感覚)」というテーマだった。「それぞれの故郷への思いがひとつになって、つながっていったら、感動的ですよね」という。しかし、監督1人ひとりは、生 まれも世代も社会背景も価値観も違う。かれらが震災をどう受け止め、どんなメッセージを伝えるか。この日がその答えだった。

家族・絆・故郷ってなんだろう…

   ベネチア・金獅子賞のジャ・ジャンクー監督(中国)は「Alone Together」で、巨大原発が見える都市郊外の家族の日常から、家族の絆を描いた。河瀬監督は「HOME」と題して、自らの幼少期と養母の姿を描き、 過去から未来へのつながりを。カトリーヌ・カドゥ監督(フランス)は、「LA DUNETTE」 で、屋根裏部屋にカメラを据えて、日常の大切さを淡々と描いた。

   カメラは何人かの監督を訪ねている。タイ・チェンマイに住むアビチャッポン・ウィーラセタクン監督は、「ブンミおじさんの 森」で、昨年のカンヌでパルムドールを獲った。映画そのままに森の中に住んでいる。日本の大震災の衝撃的な映像を見たとき、タイが津波被害を受けたスマトラ地震のときより身近に感じ、自然に対して畏敬の念 を抱いたという。そして今回は「MONSOON」と題してホタルを描いた。青年が カメラに向かって、カメラの向こうの誰かに向かってホタルを見せ続ける。「日本の災害を自分のことのように感じた。世界はつながっている。幸せとはつながり、HOMEとは思いやりでつながることではないか」という。

   ジョナス・メカス監督(リトアニア)はニューヨークから参加した。「ベッドイン」(69年)など、ジョン・レノンやウォホールらとの前衛作品で知られる。今年89歳。故郷を出て60年になる。リトアニアはナチスに占領されたのちソ連の支配下に置かれ、彼はアメリカへ逃れた。「生まれ育った故郷は原点だ。戦争や 津波で奪われても、忘れることはできない。しかし人間には希望を生み出す力がある」といった。今回寄せたのは「Mont Ventoux」という作品。14世紀の詩人の言葉をなぞり、最後に、「全ての答えは自分の中にある」とさとるというものだ。

「地球は私たちの故郷なのに、なぜ災害のタネをまくのか」

   ビクトル・エリセ監督(スペイン)は上映会にやってきた。「みつばちのささやき」(73年)で、6歳の少女アナを通してフランコ独裁下のスペインを描いた。「映画は詩だ」と直接的な表現をしない人だが今回は違った。

   「来日したのは、連帯が必要だと思ったからだ。われわれは国境を越えた連帯なしには生きられない」

   映画は「Anna,three minutes」。あの少女アナが女優になっていて、出番まで「あと3分だよ」という時間、カメラに向かって語る。

   アナは「脅威は自然だけじゃない。福島原発がその例。悲惨だ。地球は私たちの故郷なのに、なぜ災害のタネをまくのか」とストレートに迫る。

   脳科学者の茂木健一郎氏は上映会にいた。「連帯、共感の輪が広がっていると感じ、感動した。世界のいろんな人、文化、感性がひとつになる。人類の未来を見るようで」といった。

   「家という感覚」はこれから被災地の仙台をはじめ各地で上映される。似たような試みは「9・11」の時にもあった。そのいくつかの作品はいまも心に残っている。茂木は「人々が前向きになるきっかけになる」といっていたが、多分そうだろう。いや、そうなってほしい。

ヤンヤン

NHKクローズアップ現代(2011年9月15日放送「3・11 世界の監督からのメッセージ」)

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