中村吉右衛門いよいよ修業に忙しい「人間国宝」のカッコ良さ

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「情熱大陸」(TBS)2011年9月18日23時~

   この度、人間国宝に認定された歌舞伎役者の中村吉右衛門に密着したルポである。かつて筆者が京都の先斗町へ食事に行った時、ぱったり吉右衛門丈と遭遇した。もちろんそれまで何の面識もなかったし只の行きずりである。ベージュ色のトレンチコートを着てすらっとした紳士が夕闇にニコニコして立っていた。「あ、吉右衛門さんだ」とミーハー声を上げると、彼は照れ笑いした。感じが良かった。
   新橋演舞場9月大歌舞伎の秀山祭で吉右衛門は「車引」の松王丸を演じる。今年生誕120年の、初代中村吉右衛門の写真から播磨屋の様式美を学んだり、肉体鍛錬のためにジムに通ったり、67歳とは思えぬ修業に忙しい。功成り名遂げた人が、人知れず営々と努力しているのはよく見ることだが、「鬼平犯科帳」というテレビ界でも当たり役をもつ彼が、板の上の演目となると、人間国宝の名に恥じぬ芸を見せないと伝統の世界では評価が下がるのに違いない。稽古の様子は迫力があり見ごたえ満点だ。美男でないのにカッコいい。
   散髪はホテルオークラの中の行きつけの床屋、娘の誕生日には豪華な会食と、昔々は「河原〇〇〇」と呼ばれていた芸を売って生業(なりわい)とした人たちが、今やセレブもいいとこである。時代が変わったといえばそれまでだが、芸術家の地位が上がったというのでもない。歌舞伎役者もマスメディアの中のスターとして、金を生み出す者が価値を持つ時代の希少な存在になったと言うべきだろうか。

(黄蘭)

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