デジタル漬け生活って便利だけどさびしい―『おはなしのろうそく』って知ってる?

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   逃げることができない宿命。どこにいても捕まってしまい、それでいて放っておかれると心配で心細くて、ついには焦燥感まで生まれてくるもの。ネット環境やメールなど、デジタル社会にそんな印象を抱いている。

   パソコンを開けば世界中どこにいても仕事のメールはやってくる。バカンス中だろうがビーチでも仕事はできるため、たとえ3日程度でも休暇を取る際は「パソコンあるので仕事の確認はできます」と仕事相手に言い残して旅立つ人も多いと思う。自分は仕事のことを忘れるためにバカンスに行くが、仕事から自分のことを忘れられてしまうのは恐ろしい。だから、ためらいもなくノートPCを機内持ち込みの荷物に入れる。そういう意味では、全く仕事から解放されることはない世の中だ。メールをチェックしないとソワソワして落ち着かないという一種の脅迫じみた心理的状況は、仕事をやめない限り永遠に続くのだろう。デジタルのおかげで生活は潤ったが、逆に心がさびしくなることも増えてきた。そんなことを改めて思うことが先日あった。

満員電車の母子2組

   連休最終日の夜、行楽地帰りの客でごったがえした満員電車の中。一人の男の子が疲れたのかぐずり始めた。込み合った車内で大人だってヘトヘトで、ぐずりたくなってしまうような状況。その男の子を疎ましく思いながらも、私も堂々とぐずりたい!と心の中で泣きながら見つめていた。すると降車時に母親が坊やの手を引きながら言った。

「もうすこしでお家だから。帰ったら大好きなおはなしのろうそく読んであげるからガマンね」

   「うん、わかった」と坊や。

   『おはなしのろうそく』をご存知の方いらっしゃるでしょうか。手のひらサイズの小冊子で、日本や海外の昔話などが収録されている読み聞かせ用の児童書だ。誕生から40年近い歴史を持ち、読み聞かせのいわばバイブル的存在として、これまでに総発行部数は160万部を超えている。私も子供のころ、読み聞かせにハマっていた母の影響で、「おはなしのろうそく」からいくつもお話を読んでもらったものだ。電車の中で偶然に聞いた「おはなしのろうそく」。その単語を聞いただけで、ジワ~~っと心の中にあったかいものがあふれてくるような気がした。

   素敵な親子が下車した後、もう1組の親子に目が行った。先ほどの坊やと同じような年格好の男の子とそのお母さんだ。お母さんがカバンからおもむろに携帯型ゲーム機を取り出し男の子に与えると、彼はすぐさま画面を食い入るように見つめゲームを始めた。

大人になってからの自慢

   別にデジタルをすべて否定するわけでは毛頭ない。昔は図書館で調べないと分からなかった文献もすぐにわかり、映像資料のやりとりもパソコンさえあればいい。随分とこの仕事はデジタルに助けられている。でも、短い人生、デジタルしか知らないのはどうなんだろう。いずれイヤというほどデジタル漬けになる毎日が待っている子供たち。人生の最期だってデジタル管理されて、自由に死ぬことも難しい今、幼少期ぐらいしかデジタルと乖離することはできない。携帯やタブレットのアプリにも絵本や子供用のものが豊富にあり、活況を呈しているという。目で見て楽しくすごく便利だとは思うが、イマジネーションをする心の成長はどうなのだろうか。

   母親が読んでくれる話を熱心に聞いている坊やを想像してみる。なんだかとっても絵になる光景だ。彼が大きくなったころ、その思い出が実は自慢できるものと思ってほしいものだ。

モジョっこ

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