2024年 4月 24日 (水)

弁護士なっても仕事ない!やっと来た依頼は時給800円

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「弁護士を目指し難関を通ったけど職がない」

   司法試験の合格者が逆風に晒されている。実務経験のないまま独立する「即独」と呼ばれる弁護士のタマゴも出てきた。背景にあるのは10年前に始まった司法制度改革。仕事のパイが広がらなければ、弁護士が増えた分だけダブつくのは当然。先の見通しを読み違え、理想を掲げて法科大学院制度を導入し、弁護士ばかりを増やしたツケが回っている形だ。「クローズアップ現代」は弁護士を取り巻く現状を取り上げたが、残念ながら以前から指摘されている問題点をなぞっただけだった。

10年間で1・6倍に急増。ダブつく司法試験合格者

   デフレ不況の最中、規制を撤廃し競争原理を導入して経済活動を活性化させようと盛んに煽った小泉政権時代。その一方で、頼りがいのある身近な司法の実現を目指し弁護士、検察官、裁判官の基盤強化が重要だとして司法改革が進められた。3職種の質と量充実させ、さらに企業にも採用してもらい、頼りがいのある身近な司法を実現させようと導入した法科大学院制度が目玉だった。

   これを受けて、大学で法律学を学んだ既修コース(2年課程)、大学で法律学を学んだことのない未修コース(3年課程)、両コースの他に働きながら学ぶ社会人コースを専門とする法科大学院も登場した。当初、20~30校と見積もられていた開校が、今や74校と乱立し、なかには過去に司法試験の合格者を出した実績のない大学までが開校している。この結果、司法試験に合格する法科大学院卒業生の割合は5年連続で低迷、今年も前年より11人少ない2063人で合格率は23%とどまった。

   それでも10年前に比べて、弁護士の数は急増している。2001年に1万8243人だったのが11年には3万537人と1.6倍だ。グローバル経済のなかで経済が活性化されていれば、十分飲み込める数かもしれないが、依然デフレ不況の真っただ中、むしろ悪化の傾向さえある。パイが広がらないなかで、弁護士事務所や企業に就職できない司法試験合格者が続出しているのも当然といえる。

   就職を断念し、実戦経験をへずにいきなり独立した「即独弁護士」は、「履歴書を40枚も50枚もいろんな事務所に配ったが、返事をもらったのはほんの数か所。酷いところでは、パート弁護士とかいって時給800円で雇うところもある」とすっかり諦め顔だ。

乱立する法科大学院を「整理・削減」

   文科省は昨年9月(2011年)、乱立で質の低下が問題視されている法科大学院の手直しを行った。「3年以上合格者が全国平均の半分未満」などの法科大学院は補助金を削減するという。87人が受験し6人しか合格せず、来年度から補助金が削減されることになった桐蔭横浜大法科大学院もそのひとつだ。ここは社会人コースを設け、働きながら学ぶ学生を積極的に受け入れており、合格者6人のうち4人は社会人だった。番組では触れなかったが、さらに社会人コースを充実させる狙いだろうか、今年8月に社会人コース専門の大宮法科大学院との統合を発表した。乱立する法科大学院を統合し、集約化する先駆けとして関係者から注目されている。

   キャスターの国谷裕子の「法科大学院を出て司法試験に合格できない人たちも多い。どこを改革したらいいんでしょう」という疑問に、明治大法科大学院の鈴木修一教授は次のように答えた。

「早急に司法試験合格者数と受験者数の合理的なバランスを取ることが大事。できるだけ資格試験に近づけるのが重要で、それには条件がある。法科大学院側が入学時、進学時、修了時に厳格な質的コントロールをする。第2に弁護士、検察官、裁判官の3者以外の職種に5%以下しか進めない。これでは司法制度改革の理念は達成しにくい。行政分野、企業、もっといえばグローバルに活躍できるような場を弁護士は求めるべきだ。それには在学中にきちっとしたキャリアガイダンスを行うのが肝要だ」

   厳格な質的コントロールには賛成だが、3職種以外に活躍できる場といわれても、このデフレ不況が続くなかそう簡単にはいかないだろう。やはり法科大学院を減らし、量をスローダウンさせるしかないのではないか

*NHKクローズアップ現代(2011年10月5日放送「弁護士を目指したけれど…~揺れる司法制度改革~」)

モンブラン

文   モンブラン
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