「若き音楽家たち」ひたむきな欧州修業―臭みないドキュメント素晴らしい

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「カルテットという名の青春」(BS朝日)2011年10月9日21時~

   クラシック音楽界独特の「臭み」の全くない素晴らしいドキュメントである。いずれも国際コンクール入賞クラスの実力のある桐朋学園大学出身の弦楽器奏者4人が、ジュピター・カルテット・ジャパンを作り、お互いの音楽性の違いや主張の違いなどでぶつかり合いながら、音楽家として成長してゆく4年間を見つめたものだ。
   大昔、ドイツ流のしかつめらしい古典音楽解釈を上野の音楽取調掛が取り入れて以来、日本ではクラシック音楽とは楽譜通りにミスなく演奏することが最低条件で、そこには本来「音を楽しむ」音楽よりもギチギチに楽譜の音符を再現することばかりが強調された苦行の世界があった。ヴィオリストの今井信子も言うように、ヨーロッパでは音楽家の内的で自由な魂の発露こそが求められる。多少のミスがあっても、より豊かな歌心があるかどうかが問われるのだ。
   4人は夫々がヨーロッパで修業する。切り詰めた生活費、テレビもパソコンもない孤独な部屋で音楽と向き合い、音の出せる練習場までバスを乗り継いで通う。だからといって将来、大演奏家になれる保証もなく、報われることの少ない世界である。芸術とはそういうものだ。自炊のために指を痛めて演奏家生命にかかわりそうになってもリハビリは自己責任で、感動を与える演奏をすることだけが対価だ。4人とも爽やかな好青年たちで、ジャズやロックしか好きでなかったディレクターの素朴な独白もいい。制作・企画は大原れいこ。

(黄蘭)

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