2024年 4月 26日 (金)

わざとらしいスタジオの「拍手と笑い」中身ない番組ほどやりたがる…

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   テレビの仕事を続けて20年近くにもなると、さすがにお腹いっぱいになってくるのだろうか。40代のテレビマンが「最近のテレビ番組は見ていられない」と言うのをよく耳にする。理由はテロップの多用、タレントパワーありきでワーワー言っているだけのものはツライというのだ。多くの視聴者の方が感じているのと同じで、それは年齢によるものだろうか。じっくりと見る番組はなく、ザッピングでしか見るに堪えない番組が多すぎると彼らは嘆く。

そもそも演芸で拍手は「明治になってからのこと」

   テレビで目に余ることのひとつに拍手と笑いがある。番組観覧客がいなくても、まるで多くの人がスタジオにいるかのように笑いや拍手を足して番組を作る。出演者の発言を拍手と笑いで盛り上げないと番組が盛り上がらないと、勝手に思い込んでしまっているのである。すでに、強制されて拍手したり笑ったりということが、反射神経にすでに組み込まれているんじゃないか。「ここで大きな声で笑い声をあげると下品だろうな」と思っていても、つい大げさに手を叩いてゲラゲラ笑ってしまっている自分に気がつくのだ。

   しかし、この拍手、実は日本で定着したのはまだ日が浅いのだという記事を見て驚いた。舞台でいいシーンがあった時、歌手が歌い終わった後などに拍手をするようになったのは、係員が誘導して始まったという。記事によると、明治12年に行われた西洋劇の公演の際、開演時に「褒めるときは拍手をしてください」という注意があったという。同じ年の6か月前に歌舞伎の舞台を見た人の回想録には、「手をたたく者は一人もなかった」という記述があるらしい。

   見ていて思わず手を叩いてしまうのが拍手だと思っていたので、拍手をしなかった頃の日本人はどのように受けた感動を表現していたのだろう。今となっては観客がどのように感じていたのかは分からないが、そこには集団心理も働いていたのだと思う。隣の席の人が拍手をしていれば自分もしたくなるが、誰も拍手をしないなかで自分だけが拍手をするのはかなりの勇気が必要となってくる。一人だけ目立つことは今も昔も恥ずかしかったのかもしれない。

ベテランテレビマンは食傷気味

   さて、欧米から入ってきた拍手文化。それでも欧米のテレビ番組で日本のようなスタッフの笑いや拍手はあまり聞いたことがない。拍手をするのは観客だけで、スタッフの合図で拍手をするのはまあ万国共通だろうが、過剰にリアクションすることは少ないように思える。それに彼らのリアクションは出演者に対しての反応で、出演者を持ち上げる意味合いのリアクションではないようにも思う。

   ちょっとした演出で拍手やリアクションを盛ることがいつのまにか定番となっているテレビ番組。おかげで視聴率グラフがピピっとちょっとだけ上がったというようなことがあって、それを見た他番組のスタッフも右に倣えで始まったのは簡単に想像できる。自分たちが作り上げてきたテレビ文化に、自分たちが食傷気味になる。なんとも皮肉な話だ。

モジョっこ

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