海老蔵の食い詰め浪人「狂言切腹」で語り出した衝撃の事実

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(C)2011映画「一命」製作委員会
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   <一命>戦国時代が終わり、太平の世は武士道を形式だけのものにした。職を失った武士は浪人になり、食っていくこともままならない日々を送っている。「狂言切腹」といって、名門の家に切腹を申し出て、面倒を避けたい大名から金銭を得ようとする武士が多くいた。

   津雲半四郎(市川海老蔵)もその一人で、名門井伊家に切腹を願い出る。家老の斉藤(役所広司)は数か月前に井伊家であった、若浪人・千々岩求女(瑛太)の切腹の話を半四郎に聞かせる。話を聞いた半四郎は衝撃的な事実を語り始めるのだった。

   滝口康彦の時代小説「異聞浪人記」を『十三人の刺客』『忍たま乱太郎』の三池崇史監督が時代劇では初の試みとなる3Dで撮った。

圧倒的な存在感と映像美で描く3Dの「新しい時代劇」

   なんでもないようなワンカットも丁寧な作り込みで、海外での上映を意識しているのが伝わってくる。坂本龍一の音楽も勝ち過ぎず、しっとりと画面に溶け込み、最近の邦画の中では稀に見る重厚な雰囲気を醸し出している。武家社会の「狭さ」を3Dという技法を駆使し、奥行き豊かに撮るという着眼点もおもしろい。

   とりわけ市川海老蔵の存在感が際立つ。瑛太とはルックスや年齢的にも到底親子には見えないのだが、そのようなチャチャを蹴散らす力強さがこの役者にはある。演技の巧さ云々ではなく、映像美としての魅力である。彼の存在感が、小林正樹監督「切腹」(1962年)のリメイク作品としてではなく、「時代劇」という記号を解体させた「新しい時代劇」として成り立たせているだろう。

   正義は時代と共に変化していく。幸せのあり方も変化していく。メンツはあるが情けはない武家社会に生きる貧しい武士が、プライドよりも一命をかけて守ったもの。それだけはいつの時代も変わらない。その想いこそが「武士道」の根底にあるのだろう。

川端龍介

おススメ度☆☆☆☆

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