2018年 7月 22日 (日)

使われなかった安定ヨウ素剤―原発事故直後に安全委は投与指示

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   福島第1原発事故直後、政府の危機管理対応がお粗末だったために、甲状腺がん予防のために常備していた安定ヨウ素剤がほとんど使われていなかったことが分かった。

   残ったのは子どもたちや親の強い不安感。さらに使われなかった安定ヨウ素剤の在庫。その原因となった政府の無責任さ、右往左往ぶりを暴いた。

保安院「そんな助言もファックスも知らない」

   安定ヨウ素剤は放射線ヨウ素が溜まりやすく、将来、発症する可能性のある甲状腺がんを予防する効果がある。福島第1原発から50キロ圏内の26市町村で、安定ヨウ素剤を常備していたのは10市町村。実際に事故直後に子どもたちが服用できたのは富岡町と三春町の2町だけだった。

キツネとタヌキ

   使用しなかった理由について、4000人分の安定ヨウ素剤を常備していた原発のある大熊町の担当者は、「国から県、県から市町村へ指示の流れがないと、私ども動けないんです」という。たしかに、福島県の「緊急被ばく医療活動マニュアル」には「国の現地対策本部長が安定ヨウ素剤服用を指示する」と書かれてある。

   では、なぜ指示がなかったのか。実は事故発生2日後に原子力安全委員会はFAXで投与を指示する文書を送っていた。細かい文字で挿入を繰り返した中に、服用「指示」の文字がある。指示を決定した原子力安全委の医師は、「13日早朝(2011年3月)にヨウ素剤を投与するよう方針を協議し、正式に政府に送った」と言い、電話でもFAX受信の確認を取ったという。

   しかし、受け取ったはずの原子力安全・保安院の森山善範原子力災害対策監は、「安全委からの助言があったこと自体も受け取った記録も残されていない」と食い違う発言をしている。政府は3月16日になって、改めて「安定ヨウ素剤を配布」を決めたが後の祭り。みな避難して配布しようがないうえ、安定ヨウ素剤は服用のタイミングが極めて重要で、被曝してからでは効果は薄い。

子どもたちの将来のがん予防

   医療ジャーナリストの伊藤隼也は次のように指摘する。

「最も大事なのは予防的に飲むことで、被ばく後24時間経って飲んでも7%ぐらいの効果しかない。この安定ヨウ素剤は副作用があるとかいわれているが、アメリカではドラッグストアで売られている。チェルノブイリ原発事故では、ポーランドで1050万人の子どもがすぐに服用してがんの発症はなかったし、副作用もなかった」

   司会の小倉智昭「FAXを送った、受け取ってない。キツネとタヌキの化かしあいみたいになっている」

   伊藤は「スピーディーのデータで事故直後すぐ予測ができていたのに活用されなかった。この不作為は徹底的に検証すべきです」と語気を強める。

文   モンブラン | 似顔絵 池田マコト
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