気仙沼市街地の巨大漁船「モニュメントとして保存」「いや、見るのつらい」
大震災からきょう4日(2011年11月)で239日。宮城・気仙沼市内はながれきはなくなったものの、逆に荒涼とした平地の真ん中に巨大な漁船がポツンと座っている。海岸から800メートルのシュールレアリズム。
いま、ここは観光バスの撮影スポットになっている。「こんなものをここまで運んで来る (津波の)力はすごい」(名古屋の男性)、「目の前にしても信じがたい。想像を超えている」(東京の男性)という。家族連れもいる。凝った位置から写真を撮る人も少なくない。
津波の凄さ怖さ伝える「証人」
この船は第18共徳丸300トン、全長60メートル。福島の水産会社の所有で、気仙沼港に停泊中に津波の直撃を受けた。他の多くの船とともに内陸へ運ばれ、引き戻されて今の場所に止まった。他にもあった船は片付けられたが、これだけが残っている。
市はここをモニュメントにするかどうかを検討している。「このあたりに震災復興記念公園とか、背後の山を鎮魂の森にするとか、整備できないか」という。むろん、中心はシュールレアリズムだ。
しかし、地元の人たちは複雑だ。「どうしても亡くなった人を思い出す」「いい気分じゃないから」「あの船が家を壊しながらここまで来たんだ」「忘れちゃいけないことだから(保存も)いいのかな」
津波を写した映像には、船が町の中を流れていく様がとらえられていた。まさしく悪夢だ。その場所に自宅と店があった鈴木健吾さん(69)は、「撤去してもらいたい。公園化には反対です。ここに店を持ちたい。住みたい」という。船の会社は「いちばん活躍していた船なので、今の姿を見るのは辛いが、気仙沼市の判断にまかせたい」