2024年 4月 24日 (水)

大阪市長選・橋下有利で「週刊文春」「週刊新潮」八つ当たり気味

暴力団壊滅言いながら潰さない警察のしたたか

「日本では、本気でヤクザを潰そうと思えば、潰せるところまできている。ただ、今すぐなくさないのは警察の思惑に過ぎない」

   「AERA」の「芸能界と裏社会」の中で引用している後藤忠政・元後藤組組長の言葉(『憚りながら』宝島社刊より)である。

   10月1日(2011年)に全国施行になった暴力団排除条例は暮れの紅白歌合戦の人選にも大きな影響を及ぼしそうだ。演歌の大御所・北島三郎や鳥羽一郎に注目が集まっている。NHKは11月9日の定例会見で「出演契約における暴力団等の排除についての指針」を示し、暴力団などとの交際が疑われる出演者には報告書の提出を求め、関係があると判断した場合は通告や確認なしに出演契約を解除できるとした。紅白の人選が人の口に上るこの時期に発表したということで、あれこれ取り沙汰されそうだ。

   一方で、警察と暴力団の癒着構造も根深いものがあると週刊誌が報じている。「週刊現代」は弘道会の資金源と疑われる人物に浸食されている愛知県警の腐敗ぶりを告発し、「週刊朝日」は山口組の資金源になっていたと見られるホテルグループの巨額詐欺事件捜査資料が、こともあろうに警察内部の人間によって山口組側に流失していたと追及している。警察は暴力団壊滅だと大号令をかけながら、裏で彼らとつるんでいるというのでは、後藤元組長の言のように、予算や人員を確保するために、ヤクザの首に巻いたヒモを緩めたり引っ張ったりしているのではないかと勘繰られても仕方ない。

週刊誌すごい!オリンパス、鳴門部屋暴行、内柴正人セクハラもスクープ

   8日(火曜日)に「THE AUSTRALIAN」紙の記者が「週刊誌ジャーナリズムについて聞かせてくれ」と取材にきた。世界的にも政治、経済、芸能からセクシーグラビアまで1冊に入っている週刊誌は珍しいとよくいわれる。私は、これは日本人の好きな「幕の内弁当」と同じ発想だと説明している。週刊誌ジャーナリズムの役割については、事件化しない疑惑段階から追及していくことだと答え、今週の週刊誌を見せた。

   「オリンパス」社長が損失隠しの釈明会見をしなければならなくなったのは、朝日のスクープが出たからだ。鳴戸親方が急死したが、鳴戸部屋の度を超したしごきの実態や隆の山へのインシュリン注射疑惑は「週刊新潮」が連続追及してきた。柔道金メダリスト・内柴正人が教え子の女子学生に対してセクハラをしたと報じられているが、これも「週刊ポスト」が今週号でやっている。原発事故の報道では、新聞、テレビを信用していない。一番信用しているのは朝日の「福島第一原発『最高幹部』が語る」だ。2号機で核分裂が起きて臨界かと騒いだが、東電は臨界ではなかったと断定した。だが信用できず、今週の朝日を読んでようやくホッとした(タイトルは「これは臨界だ」とあったが)。そう、とっても週刊誌はすごいのだ! そう話したら納得して帰ってくれたようだった。

大阪人アンケート「橋下54票対平松42票」

   さて、「週刊文春」、新潮が報じた橋下徹の出自報道に対して、ポストが「橋下徹『抹殺キャンペーン』の暗黒」で、度が過ぎると批判している。両誌は橋下の父親が同和出身で暴力団組員だったこと、橋下が小学2年生のときに自殺していることなどを報じたが、こうしたやり方は「集団リンチ」(ポスト)のようで「立派な差別、人権侵害」(同)だとし、橋下が権力者だから許されるという考え方はおかしいと噛みついている。

   AERAは「『同和と実父』報道に反論」で、橋下のツイッターによる反論を載せているが、その中でこういっている。

「今回の報道で俺のことをどう言おうが構わんが、お前らの論法でいけば、俺の子供にまでその血脈は流れるという寸法だ。これは許さん。今の日本のルールの中で、この主張だけは許さん。バカ文春、バカ新潮、反論してこい。俺に不祥事があれば子どもがいても報じろ。俺の生い立ちも報じろ」

   現代は大阪人100人に緊急アンケートをして、この出自報道が市長選にどういう影響を与えたかを調査している。それによると橋下54票、平松邦夫42票で、少し前のような勢いはやや減じたが橋下有利は変わらないとしている。

   「サンデー毎日」も3人の政治評論家、選挙プランナーに予測させている。2人は橋下有利だが、1人は共産党が候補を出すことを断念したことで約10万票が平松へ流れる可能性があると、平松リードと見る。

   今週も文春は巻頭で「橋下徹の『逆襲』!」と特筆大書しているが、中を読むと、いくら批判しても橋下有利は覆らず、やや八つ当たり気味で迫力がない。新潮は文春と同じネタだが、3ページとトーンダウン。中学時代の同級生に政治資金のためのパーティ券を斡旋してもらったが、そのあと1年余の間に、その同級生が代表取締役を務めていた建設会社が、大阪府の公共工事を5件も受注していたのはおかしいと、共産党府議団が橋下に公開質問状を送ると発表した件を問題にしている。これが「バカ新潮の血脈論は、公衆便所の落書きと同じだ」と橋下にツイッターで書かれたことへの返答のようだが、これも迫力不足。

   ところで、ポストのいっているように、橋下のプライバシーを書くことは、人権侵害なのだろうか。現代で吹田市在住の作家・高村薫がこう発言している。

「橋下氏は知事在職時代に府議会で『私はいわゆる同和地区で育ちました』と発言しています。首長が発言した以上、そこには政治的な意味が発生します。ですから、週刊誌が彼の出自について指摘すること自体は、なんら問題のあることではないと考えます。橋下氏の反応は過剰ではないでしょうか」

   私も同感である。政を行う人間は公人である。公人のプライバシーは制限されるというのが私の考えである。橋下の、自分には子どもがいるという反論はわからないでもないが、大方の人間には肉親もいれば妻子もいる。彼のいい分を認めれば、そうしたことはまったく書けないということになってしまう。ともあれ、めでたく橋下大阪市長が誕生したら、新潮、文春の編集長と公開討論をやったらどうだろうか。

雅子妃バッシングなぜあそこまで…解せない

   橋下批判と並んで文春、新潮がご執心なのは雅子妃への批判である。今週も「雅子さま4泊5日『泊まり込み』愛子さまご看病への懸念」(文春)、「『雅子妃』に批判的PTAの『いい加減にして頂きたいわ』」(新潮)と並んでいる。文春は愛子さまが風邪にかかり「マイコプラズマ肺炎」の可能性が高いことから、東大医学部付属病院へ入院したのは、雅子妃が宮内庁病院へ不信感をもっているためだとしている。入院した特別室は1日18万円のVIP病室で、食事は15階にある「精養軒」からデリバリーサービスを受けることができ、ご丁寧に「ツナクリームのスパゲッティー」「米粉の和風パスタ」「オムハヤシ」だったと調査報道している。

   新潮によると、愛子さまと雅子妃のために、運動会など学習院の学校行事が警備のためにものものしくなり、PTAの中には「いい加減してほしい」と口に出す人が増えてきたというのだ。雅子妃バッシングは女性誌のほうがよりすごいが、なぜここまで書かれなくてはいけないのか、皇室にほとんど関心のない私には解せない。ここでも何度か書いているが、雅子妃は現在病気療養中なのだから、静かに見守ってあげるのがいいと思うのだが。

「居酒屋は大人の避難所」さあ、今夜はこの店で飲もう

   最後に、現代のカラーグラフ「池内紀が案内 今宵、ひとりで居酒屋へ」がいい。ドイツ文学者の池内は「居酒屋はひとりで訪れるのが楽しい」という。「居酒屋は大人の避難所」だともいっている。私も同意見である。ひとりでふらりと入ることができる居酒屋をいくつかもっている飲兵衛は幸せである。ここには6軒の居酒屋が載っている。「北畔」(台東区上野)と「三漁洞」(渋谷区渋谷)、「シンスケ」(文京区湯島)は何度か通っている。莫久来というほやとこのわたを和えた珍味がおいしそうな「岩手屋本店」(文京区湯島)がよさそうだ。これから行ってみよう。

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