2024年 4月 25日 (木)

女子力アップでメダル増産―ロンドン五輪向け「サポートプロジェクト」

   女子アスリートの活躍がめざましい。牽引役となったのは女子サッカーの「なでしこジャパン」だった。女子アスリートたちの胎動に国も着目、女子の五輪種目が増えるなかで注目種目に人と資金を投入し、ロンドン五輪のメダル増産を狙ってサポートプロジェクトを立ち上げた。スポーツの休・廃部が相次いだ経済界でも新たな支援の輪も動き始めている。

13種目に国がスポーツ科学の専門家派遣

   人、モノ、金が男性アスリート中心に配分されてきたぬるま湯のスポーツ界。夏の五輪のメダル数は躍進した東京五輪(1964年)の後は低位横ばいが続いており、後から追い上げてきた中国に大きく水をあけられている。

   これに対し女性アスリートたちは、経済的、社会的な後押しに恵まれず、家族の支援を頼りにひたむきな努力で世界のアスリートと戦える実力をつけてきた。五輪のメダル数もここ20年間に女子が半分を占めるようになってきている。

   国が始めた女子アスリートのサポートプロジェクトはそうした女子パワーに着目し、今年度は22億円の予算をつけ、13種目にスポーツ科学の専門家を投入している。

   2000年に五輪の正式種目となった女子トライアスロンは、9月(2011年)に横浜で行われた世界選手権で日本選手女子を文科省から派遣されたスポーツ科学の専門家6人がハイスピードカメラで追った。足の着地点一つひとつを確認してレース中に歩幅がどう変化するのかを調べたり、自転車の速度やペダルにかかる力を計測し、最新理論で選手たちをバックアップする。長年指導してきたコーチも気づかなかった課題を科学の目で見つけ、練習方法の改善に結び付けていくのだという。

「女子アスリートにはそれだけメダリストになりえる選手が多いということですか」

   キャスターの国谷裕子が聞くと、スポーツマネジメントが専門の高橋義雄筑波大大学院准教授はこう答えた。

「これまでもJOC(日本オリンピック委員会)を通じてメダルを取るために競技力を強化してきている。国のサポートはプラス・アルファをとして、メダルのとれるチャンスのある種目について男女を問わずサポートしている」

女子ラグビーに企業が共同出資

   企業の運動部の休部や廃部はこの20年で350社にのぼるが、そこにも変化が起きている。狙いは女子アスリートたちの斬新でひたむきなパワー。

   7人制の女子ラグビーが5年後のリオデジャネイロ五輪から新たな正式種目に加わる。その出場を目指した女子ラグビーのチーム「ラガール」が5社の共同出資で昨年10月誕生した。出資を呼びかけたのは経営コンサルティング会社を経営する元ラガーマンの古市勝久社長。12人の選手はラグビーの初心者ばかりだが、個々の選手は錚々たる経歴の持ち主だ。

   今春からチームに入った西村美樹は女子陸上800メートル走の日本記録保持者、主将を務める藤崎朱里はバレーボールのVチャレンジリーグのMVP選手である。自前のグラウンドを持っていないため、公営のグランドを借りて毎日夜遅くまでトレーニングに汗を流す。なでしこジャパンを参考に、選手個人がそれぞれの後援会を立ち上げ、ブログなどで個人の魅力を前面に打ち出すチームづくりにも力を入れる。出資金額を小口化して、企業のほか個人からの出資も容易にした。

   12人の選手のうち5人を自社で雇用した古市社長は、「一生懸命やっている姿を見て社員も勇気づけられるし、俺たちも負けてはいられないと張り合っている」という。

   そんな企業の新たな取り組みに高橋准教授は、「五輪というビッグイベントに新たに加わる女子ラグビーを取ったのは非常にセンスがある。手垢が付いていないので、どんな物語も描けるし、ビジネスの論理をしっかりスポーツに導入している点も注目される」と話す。

   こうした支援を受けて、女性パワーがロンドン五輪でどれだけメダルを量産し、スポーツ界に刺激を与え変えていくか、期待が膨らむ。

NHKクローズアップ現代(2011年11月16日放送「女性パワーがスポーツを変える」)

モンブラン

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