人間の五感奪う奇病蔓延!それでも求めあう男と女―肩凝らない大人の童話

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(C)Sigma Films Limited/Zentropa Entertainments5 ApS/Subotica Ltd/BBC 2010
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パーフェクト・センス>五感が次々に失われる謎の伝染病SOSが蔓延した世界を舞台に、愛し合う男女の姿を描いた作品だ。主人公は『ゴーストライター』でヨーロッパ映画賞最優秀男優賞を受賞したユアン・マクレガー、相手役は『007/カジノロワイヤル』でボンドガールを演じたエヴァ・グリーン、『狩人日記』のデヴィッド・マッケンジー監督が絶望の中でこそ力強く光る希望を描いた。

嗅覚、味覚、聴覚…次々失っても

   一夜限りの恋ばかりで、本当に人を愛したことのないマイケル(ユアン・マクレガー)と、失恋を引きずり恋に臆病になっているスーザン(エヴァ・グリーン)が出会い恋に落ちたのは、奇しくもSOSと名付けられた伝染病が世界中に蔓延し始めた頃だった。SOSは人間の五感を奪っていく未知の病で、マイケルとスーザンも発症してしまう。

   まず嗅覚、次に味覚と失われていく。シェフであるマイケルは客が入らないと落ち込むレストランのオーナーを励まし、触覚に訴える料理を考案するなど、スーザンと前向きに生きていこうと努力する。しかし、感覚が失われる前に発作的に負の感情が爆発する症状のせいで、マイケルはスーザンに強く当たってしまい、2人の関係にヒビが入る。

   感染病ものというとSFを思い浮かべてしまうが、この映画は科学を無視している。そもそも登場人物たちは感染症について全くわかっていないという設定なので、観客にも病気の説明はない。わけも分からないうちに人類が滅亡の危機に瀕している極限状態の中で、1組の男女の恋愛に焦点を絞っているのだ。

   感染症の説明に乏しいので序盤は映画に入りにくい。臭覚が失われた世界とはどういうものなのか、映像と音だけで表現するのはなかなか難しいからだ。しかし、味覚、聴覚と他の感覚が次々に失われていくにつれて、映画的な表現が可能になっていく。デビッド・マッケンジー監督の演出上の工夫にも助けられ、想像もできなかった世界に少し足を踏み入れることになる。

女好きの男と恋に臆病な女…気になるステレオタイプ

   味覚が失われた後の風呂場でのラブシーンはとても魅力的だ。2人でソフトクリームのように浴槽の泡を舐め、チョコレートのように石鹸を食べてみるなど、まさにこの設定ならではの描写で、体験したことのないシチュエーションでありながらも、それらの行動にどこか共感できる。絶望の中でも楽しみや希望を見つけて生きていこうとする2人の健気さが胸を打つ。

   ただ、監督・脚本家の狙いだとは思うが、伝染病の突拍子のない設定に比べて、人物のキャラクター造型があまりにもステレオタイプだったのが気になる。この映画から伝染病という設定を抜いたら、女好きだが本当の愛を知らないモテる男と、過去の失恋を引きずって姉に励まされる女の恋愛という、どこかで観たことのあるようなラブコメ作品になりそうだ。伝染病の設定に頼り過ぎていて、人間ドラマとしては物足りない。まあ、大人向けの童話を読むような感覚で観るといいだろう。それならステレオタイプのキャラクターも多くの人に共感が得られるだろうし、非科学的な部分も気にならない。

おススメ度☆☆☆

野崎芳史

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