福島・浪江町に移住した老人―穏やかなはずの余生狂わせた女と原発

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「ザ・ノンフィクション600回記念 老人と放射能~FUKUSHIMA~ 第1章」(フジテレビ)2012年1月15日14時~

   数々の優れたドキュメンタリーを送り出してきた当番組が600回記念で2週に亘って送ろうとして取材していたものが、東日本大震災の発生で大幅に方向転換せざるを得なくなった。最初の企画は老人を追った「日本の春」だったのに、原発事故でそんな長閑なものではなくなったのである。大震災が起こる前の記録が第1回だ。
   川本年邦さんという80歳を越えた古老は、12年前に東京から福島県の浪江町に越してきて、自然と犬と共に穏やかな余生を送るつもりだった。ところが、NPO法人の女に老後の資金は巻き上げられるわ、家族とは別れるわ、子供たちに本を寄贈したり、幻燈会の奉仕活動をしていたのも大震災ですっかりダメになってしまう。
   震災後については第2回で描かれるので筆者はまだ見ていない。自然と共に自給自足の生活を目指した川本さんが、何故、東京を捨てたのかよくわからないが、孤独に強い意志の人なのだろう。老人と子供の楽園を作りたかった目標は挫折したが、ガスも水道もテレビもない1人暮らしはいいという。疑問は、NPO女に騙されたのは寂しかったからではないのか。自然豊か=心穏やかに暮らせる楽園の先入観が取材者にあるようで気になった。今の日本はどんな山里へ行こうが楽園などはない。筆者も田舎に戸建別荘を持っているが、マンション暮らしよりセキュリティに不安がある。ま、そこには目を瞑るとして、長い年月をかけた密着取材の努力は立派である。

(黄蘭)

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