2024年 4月 24日 (水)

韓国に離され中国に迫られる日本のテレビメーカー―リストラで技術者流出

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   今月(2012年1月)ラスベガスで開かれた世界最大の家電ショーで、韓国のメーカーが大型有機ELテレビを発表した。厚さわずか4ミリ、55型。 日本メーカーも大型化できなかったものだ。居合わせた幹部も「きれいですね」と驚く。テレビ事業の現状を端的に表していた。

価格競争に敗れ次々生産撤退・縮小

   日本家電の花形であったテレビも、いまや韓国の後じんを拝している。昨年の売り上げは1位サムスン電子、2位LG電子と韓国が占め、3位以下にソニー、パナソニック、シャープ、東芝が並ぶ。 収益もソニーは7年、日立は6年、 パナソニックは3年連続の赤字だ。パナソニックはプラズマ生産を大幅縮小し、日立は自社生産を放棄、ソニーも販売目標を半分に下げるなど、どこも縮小を強いられている。価格競争に敗れた結果である。

   ブラウン管時代と違って、薄型テレビは技術がなくても簡単に作れる。電源と基盤とパネル、この3つを組み立てればテレビは写る。大阪のパソコン周辺機器メーカーは5年前に参入して65万台を売った。この安売りに大手は太刀打ちできなかった。

   韓国メーカーはこれを大規模にやったのである。LG電子は7年前に東京ドームの3倍の広さの工場を660億円で建設した。いま年間3400万台を作って、アジア、日本に売っている。LGにはもうひとつの戦略があった。日本のメーカーが重視してこなかった地域に販売を展開したのだ。そのためのアイデアも細かい。アラブ地域向けにはコーランが流れる仕様、音楽好きのインド向けはスピーカーの大きさを2倍にした。収益を新製品開発につぎ込み、日本をかわしたのである。彼らの眼中にいま日本はない。むしろ追い上げる中国製を脅威と見る。事実、売り上げで日本4社のすぐ次には中国メーカー3社が迫っている。

   韓国の躍進には追い風もあった。リーマンショック以後の急激な円高とウォン安である。政府の優遇措置も大きい。補助金があり、法人税率は日本の半分。日本メーカーは「2000億円の工場が毎年ひとつただで作れるくらいの違い」だという。

高画質、ソフト、付加機能で復活できるか?

   首都大学東京の森本博行教授は「2000年以降、日本企業が行ったリストラで技術者が韓国へ流れ、技術も流出したのが大きい」という。大規模投資による規模の経済と為替のメリットをこれらが支えた。しかし、日本のメーカーもテレビ生産をやめることはできないという。「テレビは家電の顔なんです。ここから撤退することは、家電から撤退することになる」

   むろんメーカーも必死だ。大阪のメーカーが今月発表したパネルの画素数はハイビジョンの4倍の高画質だった。日本でしかできない。問題はこれをどう生かすか。各社の戦略もそれぞれだ。

   ソニーの発表会にはハリウッドスターのウイル・スミスが登場した。主演映画をテレビで観てもらう。ソニーはゲーム、映画、音楽を自前で作っている。これらをネットで配信して、テレビで観てもらう戦略だ。パナソニックはテレビと他の家電製品をつないで、テレビで家中の家電をコントロールさせようとする。シャープは画面の大型化で挑む。60型以上の液晶パネルはシャープ の独壇場だ。その画面をホワイトボードのように書き込み可能にすることで、オフィス、病院、学校などでの需要を作り出そうという。

   シャープの片山幹雄社長は「次のテレビが何者かを模索しないといけない。どんな価値を加えられるかが復活のカギ」という。試行錯誤の先はまだ見えていない。厳しい知恵比べは続くようだ。

   と、ここまではわかったが、昨年まで続いた「地デジ化」の大騒動が出てこない。テレビ事業はこれで大いに足を引っ張られたのではなかったか。その話が聞きたかったが、NHKも一枚かんでいただけに出しにくかったか。

ヤンヤン

NHKクローズアップ現代(2012年1月26日放送「日本メーカー テレビ復活のカギは」)

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