科学で調理する「究極の味」液体窒素で鮎塩焼き凍結・粉砕!で、味は?

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   素材の旨味を生かす和食で、科学の知識で素材を深化させたり、新しい食感を作り出したり、伝統の知恵を再認識したりとさまざまな試みがされている。京都大学で3年前に始まった「日本料理ラボラトリー」では、3人の科学者と料亭の料理人たちが意欲的な実験をしていた。

   ある日のテーマは「カブの煮物」だった。カブの持つ甘さを極限まで強めようという。 カブをミキサーにかけて液状にして凍らせる。糖分の融点はマイナス2度なので、マイナス2度に保つと水分は凍ったまま糖分だけを抽出できる。その糖分を別のカブの煮物に加えた。「むちゃくちゃ甘い」

   始めたのは農学部の山崎英恵助教。栄養化学が専門で、「身体にやさしい日本料理を見直し、より魅力的に」を目指す。研究は料理人の価値観も変えつつあった。

日本酒シャーベットに柚子の泡

   鮎の塩焼きで知られる老舗料亭の下口英樹さんは、液体窒素に鮎の塩焼きを放り込んだ。マイナス196度は一瞬にして塩焼きを凍らせる。これをミキサーで粉末状にしたら、表面積が数百倍になって香りがさらに引き立った。寿司めしにまぶした「鮎寿司」は大成功だった。

   「味の時間差」も面白い。「酢みそ」は味噌と酢と辛子だが、舌は感じる場所が違う。これを意図的に時間差をつけられないか。料理人が持ち出したのはゼラチンと寒天。ゼラチンは30度、 寒天は90度で溶ける。味噌はそのままに、酢をゼラチンで包み、辛子を寒天で包んで混ぜ合わせた。「酸味がポコポコ出てくる」「後から辛くなる」「若者に受けそうなてっぱえ (酢みそあえ)ができる」

   日本料理の基本の昆布だしも「60度で1時間」が最適と割り出したのもこのラボだ。試みはなお続く。

   料理専門学校校長の服部幸應さんがいくつかのサンプルをスタジオに持ち込んだ。「特別のシャーベットを」と液体窒素に日本酒を放り込んだ。「日本酒はマイナス40度で固まり始めますが、液体窒素だとすぐです」。これをグラスに入れて、柚子の泡を乗せた。

   国谷裕子キャスターが一口含んで、「あー、柚子の香りが豊かな」と感嘆。「デザートでもいいし、途中で出してもいい」と服部。こうした料理に科学パフォーマンスを加える試みはスペインから始まり、フランス料理、中国料理を経て日本に来た。

野菜は50度の湯で洗うとおいしくなる

   伝統料理を科学で解き明かす動きもある。食材と温度の研究家、平山一政さんは、料理教室で野菜の「50度洗い」を教えている。50度の湯で洗うと野菜はシャキッとして色まで違ってくる。細胞間のペクチンとカルシウムイオンの作用だが、ヒントは野沢温泉だった。昔から温泉で野菜を洗っていた。

   平山は蒸し器の開発もした。穴を開けて途中で蒸気を逃がす工夫だった が、大分の別府温泉で蒸気で野菜を蒸しているやり方がまさにそれだった。「こんな知恵をなんで今まで放置しておいたのか」という。山形・小国町では、わき水で炊いたご飯がおいしいという。平山が訪ねてみると、たしかにおいしい。わき水の水温は12度から16度。研究所で水温を変えて試みたところ、15度 が一番と出た。小国町の秘密は証明されたのだ。

   服部は「温度だけじゃない。水も関係する」という。同じやり方で各地で豆腐を作ったところ、カルシウムの含有量の違いで全然違う豆腐になった。なるほど、料理の奥は深い。「進化もほしいが、いいものは残してほしい。両方です」

   同じものでも、よりおいしく、楽しくという意欲では、日本は間違いなく一方の雄だ。世界中の料理が楽しめる国ということではトップだろう。これがさらにおいしくなるだと? ますます長生きしないといけないではないか。

ヤンヤン

*NHKクローズアップ現代(2012年2月2日放送「『究極の味』を求めて ~科学が開く料理のトビラ~」)
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