高齢者の豪雪事故死―支える世代いない20年後のニッポン先取り

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   東北から山陰にかけて続いている豪雪は例年の2倍から3倍、平成18年の豪雪に匹敵するといわれる。死者も多い。平成18年には152人で過去2番目だったが、今回はすでに131人、 高齢者の除雪中の事故が大半だ。県別では新潟の83人が最も多く、うち57人が高齢者で、7割以上が屋根などの除雪作業中だった。新発田で亡くなった83歳のひとり暮らしの女性は足が不自由で、除雪中に側溝に落ちたらしい。見つかったのは半日後。「だれも気づかず、気の毒だった」と近所の人は言う。

   妙高市から車で30分の集落で、野口カズエさん(83)はひとりで屋根の雪下ろしをしていた。先月足を滑らせ右ひざを痛めたが、「痛いけど、やらんわけにいかんので」と話す。雪の重みで家の外壁が歪んでいた。昔は地域が助け合って雪下ろしをしていた。それが今は35世帯。20年前の3分の1だ。7割以上が高齢者だから、もう助け合いもできない。有線放送が「大雪」を告げていた。野口さんは「いつになったら春になるんだか」とつぶやいた。

   積雪が3メートルを超えた津南町役場には、雪下ろしの要請が100件以上もきていた。しかし役場は動けない。除雪費の予算1億4800万円はほぼ使い切っ てしまったからだ。建設業者に委託している除雪は町が孤立しないように幹線道路が中心で、個人の家までは手が回らない。

ボランティア希望あっても「受援力」間に合わないミスマッチ

   長岡技術科学大学・上村靖司准教授の分析では、事故の中心の年代が80年代は50歳台、90年代は60歳台、2000年代になると7~80歳台だった。つまりいつも同じ年代だ。「除雪の担い手の世代交代ができていない」。地域でも市町村でも建設業界でも若い人がいなくなって、その代わりがいない。「豪雪地帯では高齢化が10年20年 先行しているんです」という。

   平年の2倍の積雪になった妙高市にこの2日(2012年2月)、120人の助っ人が集まった。県内の建設業者や消防団員だ。新潟県が始めた新しい試みだっ た。県が市町村からの支援の要請を受け付け、県内の余裕のある関係者から人を募るのだ。この時は5日間で延べ938人が除雪作業にあたった。これで差し迫った倒壊の危険のある92戸分は除雪したが、支援が必要な家は1800戸。2メートルの雪に10人がかりで丸1日という家もあった。市職員は各戸を回って「ミシミシと音がしたら 逃げて」と言って歩いているが、あくまで一時しのぎでしかない。

   ボランティアを募っているのは柏崎市だ。今年の登録は140人。昨年の1.5倍だった。愛知から来たという若者は、東北や和歌山へ震災や大水のボランティアに行ったというが、雪かきには慣れていない。「1軒に丸2日かかった」「おじいちゃん、おばあちゃんの笑顔が見られて幸せ」と話す。このところの災害続きでボランティアの機運は高まっているというが、上村准教授は「受ける側の『受援力』がまだだ」という。 コーディネートの能力のことだ。資機材の用意、保険、名簿の管理、仕事の振り分けなどができないとボランティアの力が生きない。

地域、行政、企業と集落の結びつきに求められる「災害対策の潜在力」

   内多勝康キャスターが「受け入れ側の養成はできないのでしょうか」と聞くと、上村准教授は「これは難しい。新潟は中越地震などで慣れている方です」という。普段から地域同士、行政同士、あるいは企業と集落という結びつきを持っていれば、いざという時に「災害対策の潜在力」になるという。上村准教授の言葉が衝撃的だった。

「支える側が足りないという20年後の日本の姿が表出している。そういう事例として見てほしい」

   なるほど、これなら雪害を実感できない人たちにもわかる。しかし20年後、雪の山里はどうなっているだろう。

NHKクローズアップ現代(2012年2月9日放送「豪雪から高齢者を救え~相次ぐ除雪中の事故死~」

ヤンヤン

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