2024年 4月 19日 (金)

スピルバーグ「不安な時代だから映画の果たす役割大きい」

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   総興行収入世界一、40年間ハリウッドの頂点を走り続ける65歳のスティーブン・スピルバーグ監督とはいったい何者なのか。キャスターの国谷裕子がハリウッドでインタビューした。「戦火の馬」の全国ロードショー公開を3月2日(2012年)に控えて、ちょっと宣伝臭いタイミグといえなくもないが、ハリウッドの大御所は国谷の質問に率直に答え、今なお「映画製作をしながら未知の世界の扉を開く」のが生きがいだと語る。その生き方、映画製作への一貫した姿勢に感銘を受けた。

「戦火の馬」は戦争映画でなくラブストーリー

   最新作「戦火の馬」は、第一次大戦下、貧しい農家の少年に引き取られた1頭の馬が軍馬としてフランスの戦場に駆り出され、行く先々で敵味方を超えて兵士の心を癒し、心の交流をもたらしていく物語だ。イギリスの児童文学を映画化した作品である。

―この物語のどこに魅かれ、監督したいと思われたのですか。

「私はこれまで何度も戦争の本質について取り上げてきました。しかし、戦争を通じて、愛や情熱、人の絆を深く追求したことはありませんでした。そういった意味で、これまで私が手掛けてきたものとはまったく違う作品です。これは戦争映画ではなくラブストーリーなのです。
馬のジョーイは憎しみに満ちた兵士たちの心を癒すシンボルです。戦争という過酷ななかに動物がいることによって、人々は政治やイデオロギー、敵に対する憎しみを忘れることができる。そういうことを伝えたかったのです」

―とても古典的というか、おとぎ話のような物語です。先進国では中間層がしぼみ不況、不安の中、おとぎ話が人々の共感を得られるでしょうか。

「厳しい時代だからこそこういう物語が大事なのです。日本でも共感を呼ぶと思います。災害に見舞われたり、景気が落ち込んで、人々が今よりも以前の暮らしのほうがよかったと懐かしむような時こそ、人々はロマンやファンタジーを求め、映画の世界に現実逃避したいと思うのではないでしょうか。映画はそのような役割を担っているのです」

CGだったらつまらない映画になっていた「ジョーズ」

   スピルバーグに世界が注目したのは1971年の「激突」だった。不気味なトラックに執拗に追い回される男の恐怖が高く評価された。29歳であのサメの「ジョーズ」が空前の大ヒットを飛ばした。

―あなたが監督した主人公は、自分ではどうしようもない状況に陥りながらも、最後はそこから抜け出します。それが良いストーリーかどうか見極めたうえで、重要な要素にしているのでしょうか。

「私がこれまで惹きつけられてきた物語は、すべてチェンジに関係しています。つまり、心の成長です。過去の自分から新たな自分へと変わっていく。困難に耐えたり危険を犯したりしてその成長を実感できるストーリーなら、伝える価値があるはずです。一番大事なのは特殊効果でも、興行成績でもなくストーリーなのです」

―あなたは「ジェラフィックパーク」で真っ先にデジタルの扉を開きました。いまやCGを駆使して何でもつくれます。映画製作者はこうした新しい技術とどう向き合っていくべきだとお考えですか。

「私にとってデジタル技術は表現したいものを復元するツールに過ぎません。絵筆と同じで、絵そのものをつくり出せるものではないのです」

―「ジョーズ」の時は機械でできたサメを使っていました。今のCG技術があの頃あったとしたら、あの時より怖い映画ができたと思いますか。

「ノー、サメの姿はよくなったでしょうが、成功はしなかったと思います。なぜなら、あの時はサメの装置が壊れて動かなくなったことで私は映画の設定全体を書き直し、観客に深い恐怖を引き起こさせるための別の方法を探らなければならなかったのです。
思いついたのはサメがいるべきシーンに登場せず、水平線だけを映したり、泳ぐ人間の足だけを映した。デジタル技術でサメを表現ばかりしていたら、あれほど成功はしなかったでしょう」

   国谷が最後に「あなたにとって映画とは何ですか」と聞くと、スピルバーグはこう答えた。 「映画とは私が生きていくためのものです。『未知との遭遇』のシーンで少年がドアを開けると、その向こうにものすごい光が見えます。いまの私の姿でもあるんです。映画を製作しながら未知の世界の扉を開いているんです」

モンブラン

   NHKクローズアップ現代(2012年2月22日放送「永遠の映画少年スピルバーグ~創造の秘密を語る~

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