大の大人がハマる脱出ゲーム―自分が物語の主人公になる瞬間

印刷

   好きな映画のひとつ。ウッディ・アレンの「メリンダとメリンダ」にこういうセリフがある。

「私の望みは、私を愛してくれる人か愛する人と、ただ一緒に暮らしたいだけ」

   フランスの人気シンガーZAZは「私が欲しいものは、愛」と高らかに歌う。

   でも、これって、映画や歌の世界。実際は、こんなドラマティックな台詞を言った事も言われたこともないという人の方が多い。映画や歌で見聞きし共感を覚えても、物語の世界の話で、日常で接することはまずない。

   ところが、そんな物語の主人公の気分を味わえるイベントが大人たちの間で人気だという。リアルな現実空間で楽しむ脱出ゲームだ。調べてみると、今すごいことになっているらしい。参加人数は万単位になり、リピーターも多く、日本の有名レジャー施設からもフォーマットとして企画が組まれ、大手企業からも研修に取り入れたいという要望が相次いでいるとのこと。そのムーブメントは国内のみならず、海外にも進出し、アメリカ、台湾などでも行われ、上海には常設店までできたという。

テレビ番組とはまったく違うリアル体験

   いったい、なんだソレ? 半信半疑のまま、ある番組で取材をしてみた。参加してわかったのは、自分の力で難問に挑戦し脱出を試みる楽しさ。しかも、数分前に知り合ったばかりの参加者同士が力を合わせていく新鮮な喜びもある。

   テレビ番組でも脱出モノがあるが、それとは一線を画している。キーワードはやはり参加してナンボ。脱出するための謎が仕掛けられ、参加者はその謎を解くためのいくつものヒントを集約し、答えを導き出していく。誰かが謎を解いてくれるのではない。自分がやらなければ何も始まらない。それはまさに自分が物語の主人公になった瞬間だ。参加者は誰もが謎解きの勇者気分。目を輝かせ、嬉々として謎を解いていく大人たちは、真剣そのものである。これに比べて、テレビのゲーム番組はタレントがやっているのを見ているだけだ。

   放送業界で、絶えず新しいコンテツを求め求められている人間にとっては、なんとも悔しい。「この手があったか」と目からウロコのような魅力に満ちている。ちょっと思考回路を変えれば、放送業界としては得意中の得意の分野だったはずだ。でも、誰も手を出していなかった。

   ZAZのハスキーな声が軽やかに歌っている。「過ぎて 過ぎて 過ぎていくわ」

モジョっこ

  • コメント・口コミ
  • Facebook
  • twitter
コメント・口コミを投稿する
コメント・口コミを入力
ハンドルネーム
コメント・口コミ
   

※誹謗中傷や差別的発言、不愉快にさせるようなコメント・口コミは掲載しない場合があります。
コメント・口コミの掲載基準については、コメント・口コミに関する諸注意をご一読ください。

注目情報PR
追悼

お知らせ

電子書籍 フジ三太郎とサトウサンペイ 好評発売中