2024年 4月 19日 (金)

野田首相・週刊文春デキレースか?阿川佐和子キモ突っ込まない独占インタビュー

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「(中略)目の前の稚拙な質問者にもさぞやカチンと来ていらっしゃるでしょうに、グッと抑えておいでの優しそうなご様子に、つけこんでみましたが勝ち目は薄く、たしかに消費税は上げざるを得ないかと渋々納得させられた感があります。とほほ。(中略)将来に生きていく子どもたちのためには、どうか御身を挺してご決断くださいませ」

   これは「週刊文春」巻頭の「阿川佐和子のこの人に会いたいスペシャル 野田首相 阿川佐和子がすべてを聞いた」の終わりにあるアフターインタビュー「一筆御礼」の文章である。阿川には『聞く力 心を開く35のヒント』(文春新書)というベストセラーがあるから、のらりくらりのどじょう首相からどんな本音を引き出してくれたのかと期待して読んだが、期待はずれだった。

現役総理の単独インタビュー「異例中の異例」

   リードで「現役総理が雑誌の単独インタビューに応じるのは異例中の異例」と書いているが、一昔前ぐらいまではそうだった。私にも経験がある。中曽根康弘総理が誕生したとき、私たちがやっていた「マスコミ情報研究会」という出版社の編集者たちの集まりの会の懇親会に、中曽根首相に来てもらえないかと、秘書を通じて頼んでみた。すると中曽根はOKなのだが、官邸の記者クラブがいい顔をしないので、首相の予定には入れないで、途中フラっと寄ったということにしたいと秘書のほうから言ってきた。

   当夜、霞友会館に顔を出してくれた中曽根首相は、1時間ほど編集者たちと歓談してくれた。だが、一緒についてきた記者たちは憮然とした様子で、こちらが勧めるにもかかわらず、中には入らないで外から様子をうかがっていた。翌日のほとんどの新聞の首相動静には、この会のことは1行も触れられていなかった。だが、自民党政権末期から民主党政権になってからは、記者クラブの縛りは弱まり、首相がOKすればいつでも出られるのだ。だから今回も、野田首相がOKした背景には、出たほうがいいという判断が働いたことは間違いない。

   もちろん文春側も阿川もそれは承知の上であろう。阿川は「私なんぞの対談ページに出ていただけるというのは」などといいながら、一通りの質問はしている。なぜいま消費税アップか、小沢一郎が反対しているが景気はよくなるのか、谷垣自民党総裁との密会の真偽、原発再稼働には対しては「国民は今、保安院も安全委員会も、全然信用してませんよ。彼らの言ってきたことは、3・11以降、ウソばっかりだったんだもん」と反対を表明している。だが、ほとんどの質問はどじょう首相ののらくら答弁に弾き返されてしまっている。

   野田という男、なかなかの話し上手である。たとえば国民皆年金・皆保険という社会保障が、かつては多くの元気な人たちが一人の年寄りを支える「胴上げの社会」だったが、それが今は3人で1人を支える「騎馬戦社会」になり、2050年には一人が一人を支える「肩車社会」になってしまう。だから、今の社会保障の形はもたなくなるので、「一番公平な」税金である消費税をアップするのだと話す。何も考えずに聞いているとそうなのかと肯いてしまいそうないい方である。だが消費税が一番公平な税だというのは学者の中でも別れる見解だし、さらに消費税をアップしたとしても、社会保障に使われるのはそのうちのわずかではないかという最大の問題点を追及していない。

   原発再稼働するためには、「3・11クラスの地震や津波に耐えられると判断すれば、稼働させることはありうる」といっている。そう判断できなければ再稼働しないという言質を引き出したのはよかったとは思うが、結局このインタビューは、野田の「いろんな媒体を通じて、政策についてより知っていただく」という思惑と、それを了とした文春が、消費税アップ容認派の阿川を起用してやったデキレースではないか。本来なら首相官邸が機密費を使ってやるPRページを、タダでやってやったパブ記事といわれても仕方ない。それは阿川の文章にも表れている。

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