ストリープ圧巻!鉄の女サッチャー認知症になってなお癒されぬ深い孤独

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2011 Pathe Productions Limited, Channel Four Television Corporation and The British Film Institute
2011 Pathe Productions Limited, Channel Four Television Corporation and The British Film Institute

マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙> 『マンマ・ミーア!』のフィリダ・ロイド監督と大女優メリル・ストリープが再びダッグを組み、英国初の女性首相マーガレット・サッチャーを描いた。この映画でメリル・ストリープは『クレイマー、クレイマー』『ソフィーの選択』に続く3度目のアカデミー賞主演女優賞を受賞した。

   2008年、サッチャーの長女キャロルがサッチャーが認知症に苦しんでいることを明らかにした。夫がすでに他界したことさえ忘れるようになってしまった80代のサッチャーは、妄想の中で夫と会話を交わす。はたから見ると不可解な行動も、深い孤独に耐えるにはそうするしかなかった。そんなある日、夫の遺品を手に取りながら、彼女は懐かしそうに自分の人生を回想し始める。

さすがオスカー3度の天才女優―演じきった「老いや死は自由にできない」

   強固な信念と政治方針から「鉄の女」と呼ばれたサッチャーの波乱万丈な政治家人生を描いた作品かと思っていたら、実は認知症となりさみしい晩年を送る「現在」を描くことに注力している。もちろん、回想シーンとして、政治家を志すようになった少女時代から結婚・出産を経て議員となるまで、さらに1979年に首相になってからの経済政策、フォークランド紛争での勝利など、主となるターニングポイントや功績は出てくるのだが、どれも描かれ方はあっさりしている。むしろ、栄光の陰で、犠牲にしてきた家族との時間、仲間の裏切りや支持率低迷への苦悩など、老境にあってなお後悔や悲しみにもだえる姿が丹念に描かれる。

   どんなに強靭な精神を持ち、地位も名誉も手に入れても、時間を巻き戻すことはできないし、老いや死を自由にすることはできない。「なぜいまサッチャーの映画?」と思っていたが、この映画はサッチャーをモデルに普遍的な人間の「喪失」について描かれた物語なのである。

   とはいえ、ただ観ていて悲しいせつなくなるというだけにはとどまらない。劇中のサッチャーの言葉は、まるで現在を生きる私たちへの忠告のように響く。「どうして最近は『どう感じるか』ばかりが大事にされるのか。『考えること』が人をつくる。考えることが行動になり、それが習慣になり、人格をつくり、運命を形づくる」というセリフはとくに強く印象に残った。

   メリル・ストリープの天才的な演技が圧巻だ。そのなりきりぶりは、存命中の人物を演じるという大きなプレッシャーをまったく感じさせない。さすがオスカー像を3度も手にした大女優、そのすごさを思い知らされた。

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