プーチンが動き出した「北方4島引き分け決着」極東開発協力と分割返還

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「北方領土問題をロ日双方が受け入れられる形で最終的に解決したいと強く願っている。始め!」

   ロシア大統領に再就任したプーチンが、就任を控えた今年3月(2012年)に海外の報道陣を前に発した北方領土問題のシグナルが、いま注目されている。進展が見られなかった領土交渉だが、NHKが独自入手した文書によると、ここ数年、ロシア側が交渉打ち切りをほのめかす最悪の事態に陥っていたことが分かった。その詳細と「双方が受け入れられる形とは『引き分け』のようなもの」というプーチンの真意を探った。

菅前首相の外交ベタで「交渉打ち切り」寸前

   2年前の2010年11月1日、日本側の再三の中止要請にもかかわらず、当時のメドベージェフ大統領が初めて国後島を訪問したことで、日ロ関係は一気に悪化した。緊迫したムードの中、11月13日に横浜で行われた菅首相とメドベージェフ大統領との首脳会談は、冒頭から激しいやり取りとなった。

   菅「あなたが国後島を訪れたことは極めて残念だ。抗議の意を表さざるを得ない」

   メドベージェフ「日本とロシアはまだ平和条約を締結していないのだから、ロシアは日本にいかなる義務も負っていない。われわれには2つの選択肢がある。1つは領土交渉を継続する事。2つ目は今の望ましくない状況を踏まえ交渉を止めるということだ」

   菅「これまで長年にわたって交渉をしてきた。さらに交渉を継続したい」

   勝負あったと見たメドベージェフは、菅の交渉ベタを冷やかすように、「1点だけ申し上げれば、相手の行動に感情的に反応してもわれわれは動じませんよ」と言い放った。

   こうした最悪の状態に陥っていた中、プーチンが柔道用語の「始め!」を使って交渉の扉を開いた真意は何か。元駐日ロシア大使で、プーチンの極東重視の姿勢を間近で見てきたアレクサンドル・パノフは、「極東の開発はロシアにとってあらゆる面で死活問題だ。政治的にも国際情勢の面からも、この地域の重要性は高まっている。だから、プーチン氏はロシアが抱える領土問題をすべて解決すると決意したんだ」という。

   国谷裕子キャスターは「双方が受け入れ可能な決着を目指すというプーチンの真意はなんでしょう」と、ゲストの法政大法学部・下斗米伸夫教授に聞く。

   「ここ2~3年間に状況が変わってきました。ロシアの極東開発には、エネルギーを売って東アジアに出てきたいという狙いがあるが、中国の無関心もあって裏目に出ているんです。どういうことかというと、ロシアの人口減少が止まらず、このままだと2070年には極東から人がいなくなるという危機感が背景にあります。

   そこで、3・11の福島原発事故を考えたのだと思う。原発が止まっているなかで、核エネルギーとは別の選択肢を迫られる日本に、ロシアはエネルギーの供給元になり得るのではないかという考えです」

   極東開発には技術・投資が必要で、その点で日本は格好のパートナーというわけだ。

「誰も勝たない、誰も負けない」落としどころ

   では、プーチンの言う「引き分け」の意味は何か。パノフ元大使は「大事なのは妥協です。4島一括返還では日本の一方的勝利になってしまう。誰も勝たないし誰も負けないということです」という。

   国谷「『引き分け』にどんなイメージを持っていますか」

   下斗米教授「プーチンは強いリーダーとして保守層に支持されています。逆に言うと、妥協する能力があり、日本はそこを使うべきでしょう。エネルギー協力とか極東開発への手助け、そういう枠組みをいろんな形で増やしていく必要があります。マクロ的妥協で領土問題に落とし込んで行く。『引き分け』はそういうプロセスとして使えないかと考えています」

   野田首相は自民党の森喜朗衆院議員をロシアに特使として派遣する意向という。大統領の任期中の6年間に決着がつくのかどうか。相手は海千山千で交渉は長期に及ぶだろうが、期待も大きい。

モンブラン

NHKクローズアップ現代(2012年5月9日放送「プーチン再就任 どうなる北方領土」

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