海洋発電でも立ち後れ日本―英国は2020年までに全電力の15%原発2基分

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   スコットランドのオークニー諸島に、「ヨーロッパ海洋エネルギーセンター」がある。イギリスが国家戦略として作った海洋発電実用化の実験場だ。動いている発電装置は10を超える。ここに日本企業として初めて川崎重工が乗込む。来年から直径18メートルのプロペラを持つ潮流発電装置の実験を始める予定だ。なぜイギリスでやるのか。「世界でいちばん環境が整っているから」だ。ここでは、沖にある発電装置から海底ケーブルで発電量、気象データ、波の高さ、潮の強さなどすべてがリアルタイムで記録される。実験装置を持ち込めばただちに始められるのだ。

   川重の予定地の近くでは、他の企業が6年続けている直径6メートルのタービン型潮流発電装置が動いていた。長さ140メートル の「ペラミス(海蛇)」という波力発電装置もあった。うねりの力を油圧ピストンに伝え、その力で発電タービンを回す。1基で1000世帯分を発電することができる。

15年前にプロジェクト中断したまま

   イギリスの海洋発電は、14年前に3人の技術者が作った模型がスタートだった。政府の開発支援を受けいまは数十億円の巨大プロジェクトだ。大型化でコストが下がり、数年後には風力発電に迫るという。当局者は「短期的には風力だが、長期では海洋だ。信頼性が高く安定した電源になる」という。別の潮流実験施設では、1500世帯分を実際に町へ送電していた。天候の影響をほとんど受けないから稼働率は風力の2倍という。

   英政府は、2020年までに原発2基分を賄い、自然エネルギーを全電力の15%にしようという目標を設定している。電力会社も「2030年には40万~50万キロワットの商業化をやっているだろう」という。

   海洋発電はイギリスの他にも、アメリカ、中国、韓国、オーストラリア、ブラジルも取り組んでいる。ところが、海岸線の長さでは世界6位という日本は大きく立ち後れている。海洋エネルギーの潜在量は「原発10基分」といわれながらだ。東大生産技術研究所の木下健教授は「15年前まで国のプロジェクトがあったが、原子力と太陽に集中させて、海洋はやめてしまった。大きな失敗だった」という。

   いまはいくつかのベンチャー企業が細々と実験を行っているだけ。 和歌山・すさみ町で10年になる古澤達雄さんは、「4年、5年でできるかと思ったが、倍かかってもまだ先が見えない」という。全国30か所以上を回ったが、実験にこぎつけたのは2か所。海は権利関係が複雑で、自治体、漁協、国の省庁と、ひとつ欠けても動かない。

電力会社、漁協、自治体、国が複雑に絡む利権

   資金難もネックだ。岩手県災害復興事業として実験場の設置を考えているが、少なくとも30億円が必要で、メドが立っていない。別のベンチャーの社長は、「ちょっとやってはストップして、資金調達。その繰り返し。海外とは大きく違う」という。自然エネルギーへの政府投資をみると、日本はイギリスの半分以下だ。イギリスは「政府が実験場を用意したのが大きい」(取材記者)という。日本では、漁協、自治体、国との折衝を全部ベンチャーがやらないといけない。その差は歴然である。

   木下教授は漁協が電力の事業者になれないという別のネックもあるという。「一緒にやれれば問題の8割方は解決してしまう。岩手の場合でも、大きな戦略を立てて、自治体、住民、漁民全体で取り組めばいい。成功すれば全国に広がる」というのだが……。

   電力の3割を担っていた原発が止まり、自然エネルギーの活用は喫緊の課題だ。しかし、政府が動き出す気配はない。イギリスが目標を定めたのは10年前である。この違いは何なのか。同じ海洋国家だというのに、何ともやりきれない。

ヤンヤン

NHKクローズアップ現代(2012年5月10日放送「海から電気を作り出せ」)

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