東京スカイツリーもう一つの世界的技術―地中熱ですべて冷暖房

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   エネルギーの有効利用に熱い視線が向けられている。化石燃料のエネルギーのうち、発電などで利用しているのは3分の1、残りは排熱という形で捨てられている。それ以外にも、利用可能なエネルギーが身近にあった。アッと驚く、目からウロコの探訪である。

「捨ててる熱」「眠れるエネルギー」徹底利用

   群馬・太田市のある工場の自家発電機には続きがあった。発電で出た排熱をボイラーに導き空調に使っているのだ。「これで夏の冷房はまかなえます」という。コージェネレーションというのだそうだ。福島原発事故以来、設備を売っている会社には注文が殺到。昨年(2012年)実績は前年の15倍になった。

   堤敦司・東大教授は「エネルギーは使い捨てるのが前提だった。しかし、循環できる、繰り返し使える原理を見つけ出した」という。物体は圧縮すると温度が上がるというだれもが知っている原理がもとだ。排熱は当然温度が下がる。これを圧縮して再び高温にして再利用・循環利用するのである。昨年4月からの10か月間の実証実験で、圧縮エネルギーを含めても、燃料の消費を7分の1にできた。実験をした新日鉄エンジニアリングも「半信半疑だったが、理論が実証された」と驚く。

   熱を持ち運ぼうという試みもある。排熱を利用して水から水素を取り出すのだ。水素なら保存も持ち運びもできる。しかし、水蒸気を分解して水素を取り出すには、酸素だけを通すフィルター(電解質)と1000度ものの高温が必要だ。九州大の石原達己教授は新たな電解質を求めて、3年がかりで200種類の元素の組み合わせを探った。そして、300度で可能なものを見つけ出した。石原教授は「時間と空間を超えた。さらに低い温度で可能になれば産業化もできる。世界の省エネの大きな柱になる」という。

   富士通総研の梶山恵司主任研究員は「これらはこれからのエネルギー政策の根幹になるべきものだ」という。また、「21世紀の経済のあり方にもつながる」として、ドイツと日本の違いを示した。過去10年、ドイツではGDPの伸びにつれてエネルギー消費は減っている。対して日本は、両方ともに増えていた。ドイツの秘密は、2000年に導入した再生可能エネルギー電力の買い取り(日本はこの7月から)と、03年のコージェネレーション電力の買い取り制度だった。日本は80年代後半、原油が安くなって省エネ研究が止まった。省エネ大国が聞いてあきれる。

大阪では「下水道は宝の山」高い水温から熱取り出し

   利用可能エネルギーは身近にもあった。5月22日(2012年)に開業した東京スカイツリーは、地中熱を利用して冷暖房を賄い、2つの駅を含む近隣の10ヘクタールの建物にも供給している。地下100メートルの水温は年間を通して15度前後。夏は涼しく冬は温かい。この温度差を利用してエネルギーを48%、CO2を 40%削減できるという。

   同様に、河川や海水を利用する試みも全国各地で行なわれている。大阪では3月から国の研究機関や大学などが下水道の水を使った実証実験に入った。下水の温度は風呂やシャワーの使用で常温より高い。これを効率よく取り出す機器を開発中なのだ。

   担当者は下水を指して「資源が流れているんです」という。下水道は網の目のように広がる。このエネルギーを取り出せればとんでもないことになる。足の下は「宝の山」というわけである。

   梶山氏は「技術は確立している。コストは普及次第だ。あとは省エネと技術向上をエネルギー政策の根幹に据えること。省エネは生活の質を向上させ、経済も成長させることはドイツの例が示しています」という。

   見ていて国会の光景が浮かんで仕方がなかった。民間がこれだけやっているのに、「電力不足が」とわめいているあの連中は何をしているんだろうと…。

ヤンヤン

NHKクローズアップ現代(2012年5月24日放送「眠れる熱エネルギーを活用せよ」)

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