段取り悪い新人監督に愚痴まくる2時間ドラマ女優―仕事できる人は手際が違う

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   よほど、苛立っていたんだろう。携帯に送られてきたメールの文字が怒っている。

「ツライツライ……まだ待ちなんだけど」

   気になったので、メールするよりも電話をしてみた。何回かのコールですぐに相手は出た。「どうしたの」と聞くまでもなく、現在ある映画を撮影中の女優はまくしたてる。監督が新人で撮影の段取りが全くできておらず、メールを送って来た時はかれこれ2時間半も待っていたらしい。小道具が準備できていない、機材の調子が悪い、監督がカットに悩み撮影が中断される。そんな事態が何度も起きているとのこと。いくら新人監督とはいえ、この状況はかなりマズイだろ。彼女に同情してしまう。

   そう思いながら話を聞いていると、電話の相手は別の現場とどれほど違い、悲惨な状況なのかを話し始めている。テレビドラマなどの撮影では、どれだけ多くのカット数を1日で撮れるかが肝で、目が回りそうなスケジュールなのにと、それは昼ドラや2時間ドラマに数多く出ている彼女ならではの台詞だった。

   昼ドラは監禁されたのかと思われるほどの缶詰め状態で撮影が進行する。大御所のドラマ監督だと手際良くサクサクと撮影が進むらしい。「仕事ができるできないは段取りにこそあるんじゃないか」「自分がこれまでお世話になった方々でも、トップクラスの人達の仕事術はとにかくすぐ行動することだった。走りながら考えるタイプ。それにくらべてこの新人監督は…」と、またグチに戻りながら彼女のおしゃべりは続く。「まだですか」と口に出しては言えないが、不満はきっと顔に出ていただろう。

事前の準備ができないディレクター…間違いなく番組もペケ

   段取りが悪くてイライラすることは多い。そして、段取りが悪いスタッフほど番組内容も悪いように思う。典型的なのがプレビュー時。通常、テレビ番組は放送する前に、携わっているスタッフ全員でディレクターのラフ編集の試写を見る。パソコンで編集したデータをモニターのテレビに接続して見るのだが、この時に段取り力が出てしまう。パソコンとモニターの接続が悪くテレビに映らない、編集した素材映像ファイルが壊れた、パソコンがダウンして再起動してもまたまたダウン、接続した簡易スピーカーから音声が出てこない――などなど、本当に数多くのトラブルが起こる。試写前にチェックができていればこんなこと起こらないんじゃない?

   そういえば、こういうディレクターに限って放送尺を膨大に越える時間で編集し、試写時間に遅刻してくることも多い。要は、試写する段階にまだ到達していないまま突入しているのだ。そんな試写の時は、プロデューサーの眉間に皺が寄り、現場の空気はみるみる冷えていく。結果として、番組の展開がガラリと変更になったり、追加撮影という、時間的、予算的、体力的に恐ろしい状況が発生してしまう。ディレクターはいくつもの番組を掛け持ちしている人が多いので同情もするが、仕事が回せないようでは困る。と、自分のことを棚に上げて人のことを言い過ぎた。

「段取り悪すぎるグチを喋ったら、ちょっとスッキリしたわ~。じゃぁね~」

   ぼんやりと自分の仕事現場のケースを思い出していたら、電話の向こうで少し明るい声になった女優が話している。おっと、それでは私のグチもこの辺でおしまい。

モジョっこ

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