2018年 7月 21日 (土)

「退院勧奨」容赦ない追い出し現場「いま国の制度ではここまでです」

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   病気の親族が入院して、良くもならないのに悪くもなってないからと病院を追い出された――。最近、こんな話をたびたび耳にする気がする。膨れあがる医療費の抑制、ベッド不足の改善、在宅医療・在宅介護推進といったお国の方針により、病院には患者をいつまでもダラダラと病院に居させず、次々と効率的に患者を回転させて儲けることが求められているのである。そのインセンティブとして、診療報酬は患者を長期入院させていると少なくなるという。

82歳患者の家族「介護の人手がない。なるべく長く居させて」

   この日の番組では、国の方針を忠実に実行しているケースとして、横浜市立みなと赤十字病院が取り上げられた。地域医療の中核的な病院であり、年間1万件以上の救急車が到着し、高齢者の患者が次々と運び込まれる。そして、治療が終わったと判断すれば、すみやかに退院させる。「退院勧奨」の現場はじつに生々しい。

   大腸の手術を受けた82歳女性の家族に、看護師らが退院を告げる。女性の娘は不満である。曰く、手術を受ける前は母親は歩けていたのに、いまは歩けない状態である。歩けなくするのが医療なのか。「なるべく長く居させてもらって、少しでも元気に」なって、帰ってほしい。介護するのは自分1人しかいないし、受験期の息子の面倒もある。

「余計な感傷は何の役にも立たない」自分に言い聞かせる看護師

   これに対して、病院スタッフがキレ気味に、そんな甘い考えは通用しないと悟らせにかかった。「なんでも元気にリフレッシュして全部、というのは見きれませんよ。いまの国の制度では」。看護師もたたみかけた。「日本がこれだけの超高齢化で、医療費もどんどん膨れあがって、介護保険も破たん寸前と言われるなか、保険だけの格安の費用で、お世話が受けられるところなんかないんですね。これが現実なんです」

   この看護師は一人暮らしや二人暮らしで、退院して家に戻ることの不安を訴える高齢の患者を「サポート」している。「目の前で、家に戻って階段上れるかな、家までたどり着けるかなという人と毎日毎日接して――、どうすんだろう。ほんとにどうしようもない。どうにもなんない」と言う。なにがどう「どうしようもない」のか、放送だけではよくわからなかったが、退院を迫る患者に対する余計な感傷は何の役にも立たないし、切り捨てるべきで、それは正しいと自分に言い聞かせているように聞こえた。

ボンド柳生

NHKクローズアップ現代(2012年5月29日放送「もう病院で死ねない ~医療費抑制の波紋~」

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