衛星打ち上げビジネス熾烈な受注争奪―日本は技術あるが商売下手

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   5月18日(2012年)に「種子島の宇宙センターから打ち上げられたH2Aロケットは、韓国の衛星を無事軌道に乗せた。純国産技術による悲願達成だ。「商業利用にはずみがつく」と三菱重工は胸を張ったが、国産ロケットを取り巻く環境は必ずしも明るくない。

   三菱がこの分野に参入したのは5年前だ。コスト削減のために、政府から打ち上げ事業をまかされた。衛星打ち上げをビジネスとして成り立たせるには、年間4基が必要だという。世界で打ち上げられるのは1年間に約20基。これをヨーロッパ、ロシア、中国が奪い合う市場だ。

国別実績はヨーロッパ42%、ロシア26%、中国21%

   韓国の衛星は2年の交渉の結果だった。しかし、米の人工衛星メーカーは打ち上げ条件として「期日通りの打ち上げ」「信頼性」「妥当な価格」をあげる。数が少ないと「価格」が高くなる。韓国の次はまだ話がない。担当者は必死だ。

   技術の方も安泰ではない。H2Aロケットの部品は100万点にもなる。ほとんどが一次下請けだけで370社という中小企業が、ときに採算を度外視して支えてきた。これも数が出なければ撤退もという企業が50社はある。そうした一つ、愛知の三光製作所は社員50人でエンジンの燃料パイプを手がけてきた。1000分の1ミリ単位のトップレベルの技術を持つ。ロケットにかかわることで得た技術だ。売り上げの半分をロケットが占める。社長は「ロケットがなくなると、会社もなくなる」という。

   静止衛星打ち上げの国別実績は、ヨーロッパ42%、ロシア26%、中国21%である。欧州各国が出資するトップのアリアンスペースは300基以上を打ち上げ、最近の成功率は97%と日本の95%を上回る。日本の衛星もこれまでに22基を打ち上げているが、アリアンを選択した「スカパーJSAT」は、「技術的な問題が起きたときに、不具合のデータベースをたくさん持っているので、タイムリーに対処できる。確実に打ち上げられるサービス、これが一番」という。

   日本宇宙フォーラムの吉冨進・理事は「宇宙間輸送は国家技術と位置づけられ投資してきた。基幹技術では米欧と肩を並べられるレベルにあるが、 ビジネスという観点が欠けていた」という。

   アリアンスペースの母体である国際組織「ヨーロッパ宇宙機関」の設立憲章には、宇宙産業の育成が目的のトップにあげられている。根底にはヨー ロッパ独自のロケット技術を持つという戦略がある。かつてアメリカに振り回された苦い歴史を踏まえたものだった。

「人工衛星製造、運用施設建設、 技術者育成、打ち上げ」のパッケージ戦略

   アリアンスペースの受注は年に約10件、すでに3年先まで受注している。まとめて数を発注することでロケット・メーカーの保護にもなる。吉富氏は「国家とビジネスが結束しているから、世界一のシェアをもてる」という。

   日本も乗り遅れまいと3年前に「パッケージ戦略」を打ち出した。新興国向けにロケット打ち上げだけでなく、人工衛星の製造、運用施設の建設、 技術者の育成まで、日本の企業連合で一括で引き受けるという内容だ。これで昨年10月、ベトナムの衛星製造と制御施設などを受注した。次の目標はモンゴルだという。 

   吉冨氏は「日本は打ち上げ技術までもてる国。それを維持するのは技術のナショナル・セキュリティーだ」という。たしかに、あの「はやぶさ」の感動は、独自技術の賜物だった。他国に頼っていても、ビジネス偏重でも得られないものだ。次の世代にも伝えないといけないものだろう。

ヤンヤン

NHKクローズアップ現代(2012年5月31日放送「国産ロケットは勝ち残れるか~衛星打ち上げビジネス最前線~」)

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