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森山直太朗ご推奨「奇天烈うもれびと」ライオンと脳内格闘2万回男

うもれびと(フジテレビ系5月23日深夜0時45分)>奇人、変人のたぐいである。エスパー伊東と具志堅用高のあいだ、と言ってもいいかもしれない。メイン司会の中居正広のもとを毎回さまざまなスター芸能人が訪れ、自分の知り合いの中から、才能はあるのに世の中に「うもれて」いる芸能人、すなわち「うもれびと」を紹介する。新手の人材発掘型バラエティなのだが、これがアタリだった。

陸上で日本記録保持、睡眠時間数時間、家なし

   この日のゲストは森山直太朗である。しれっと開口一番に「久しぶりだから、『さくら(独唱)』うたって?」と頼む中居に、間をおかずに「自分から自分の持ち歌を歌うことはないんですけど、中居さんの頼みなら…、歌いますよ!」と返して絶唱する直太朗。「歌いますよ!」という含みの瞬間の真顔が、微妙な「どや感」を醸していて、本来の「うもれびと」が出てくる前から妙に楽しい。

   なごやかなムードの中で告げられた「うもれびと」は、何でも「地上最強を目指す男」らしい。漠然としすぎている。どういうことだよ。視聴者の声を代弁する中居に対し、ここでもあくまで真顔の直太朗。

   そして、ついにゲスト登場。その名は武井壮。陸上の十種競技の元全日本優勝者で、陸上競技を初めて2年半でインカレ優勝、その当時樹立した十種競技の50メートル日本記録はいまだ破られていないスーパーマンらしい。39歳、顔付きは陸上の朝原宣治とガレッジセール・ゴリを足して2で割った感のあるイケメン。すごいアスリートで、クルム伊達のように年齢への挑戦を続けているが、資金が足りないという話なのだろうか。

   しかし、予想はあっさり裏切られた。トーク番組なのに、空気椅子で収録に挑む理由を聞かれた武井は、「こうしてる間も強くなるんで」と真顔で答える。「ハァ?」絶句する中居。その後も「家はない。長年トレーニングを積むうちに、日に数時間の仮眠で十分な体質になったから」などと、質問者側の引き笑いを誘う回答を連発する。

意味不明さは江頭2:50やエスパー伊東級

   さらに、「今の目標は?」と聞かれると、恥らいながら「ライオンのいる、百獣の王の席に自分が座りたいなって思っていて」なんて言い出すではないか。なんでも、脳内でライオンと格闘(を妄想)すること2万回。いまだ全勝らしい。じゃあ、その脳内シミュレーションを実践してというフリにも全力で応える。無駄にキレのある動きでライオンと自分の一挙一動を解説するが、その計画は穴だらけ。ライオンに自分の頸動脈を狙わせる、わざと腕を噛ませて最終的には左ストレートで勝つなどめちゃくちゃだ。それを指摘されると、ものすごい笑顔で「オーケー!」と流す。中居の反応がいちいち染みる。

   しかし、武井本人はいたって大真面目だ。あまりの支離滅裂ぶりに「ネタでしょ?」となじりたくなるが、この澄んだ瞳がウソをついているとも思えない。なんだろう、この常識が通じない感じは…と思い、気が付いた。具志堅、ガッツ系列の意味不明さだ。でも、若干求められている役を自覚しているようにも見えるあたりは、江頭2:50やエスパー伊東をほうふつとさせる。いずれにしろ、得難い「イッちゃってる」人材であることは間違いない。

   ナレーションを兼任する、やたらにツンケンした黒縁眼鏡の美人秘書と中居の掛け合いも、「こみ上げる」タイプの笑いを増長する。そして何より、来週も続くらしい「武井編」は必見だ。久しぶりに、とんでもないモノを見てしまったという衝撃が残っている。ああ、どうすれば彼の奇妙さを伝えきれるのか…、適切な表現が出てこなくてもどかしい!

ばんぶぅ