女性起業家コンペ 静岡の「野菜流通改革会社」に大賞1000万円

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   「なでしこジャパン」など女性の台頭が著しいスポーツ界に刺激されてか、女性起業家を対象に賞金1000万円がかかった初のビジネスコンペが6月中旬に実施された。狙いは女性起業家を日本経済再生の起爆剤にしようというもので、「クローズアップ現代」が最終審査に残った2人の女性起業家を追った。さて、どのようなアイデアで挑戦し、どんなビジネスが1000万円の大賞を射止めたか

社員5人アルバイト2人で野菜の生育状況見ながら発注するシステム開発

   主催したのは国が100%の株式を所有する日本政策投資銀行で、その狙いについて橋本徹社長は「既存の概念にとらわれない新しい視点を持ち込む女性起業家を起爆剤にして、社会全体の変革に繋げていこうということです」と語る。エントリーできるのは「これから起業化に取り組もうとする女性」「創業3年までの女性起業家」で、20代から60代までの643人の応募者があった。

   5月30日(2012年)に行われた最終審査では、経済同友会副代表幹事、経営コンサルタント、エコノミスト、大手サービス業の経営者など錚々たる顔触れの審査委員を前に、熱の入ったプレゼンが行われ10人が残った。その中で実績のある2人の女性起業家が審査員の目に留まった。ユニークな方法で新商品を開発し、ヒット商品を生み出そうと意気込む広島市の午来千鶴さん。「広島の企業と人を元気にしたいという思いで、『広島にあったらよいな』を形にしたビジネス」を立ち上げている。

   武器は企業家同士のネットワーク。衣料や食品など人や物を組み合わせることで、新しい商品を生み出せるのではないかという発想だ。これまでにも、健康管理士のアイデアと老舗菓子メーカーの技術を組み合わせた健康饅頭「食べる竹炭」を発売して年間3000万円を売り上げた。

   もう一人は静岡県菊川の加藤百合子さんだ。正社員5人とアルバイト2人の体制でITを駆使し農産物の流通を変えようとしている。目をつけたのはカット野菜や総菜などに使われる加工用野菜である。天候次第で野菜の収穫の時期や量くち大きく変動するため、加工業者は計画的に商品を作れない不安を常に抱えている。ここに着目した加藤さんたちは、野菜の生育状況を子細に把握できるシステムを独自に開発した。このシステムを使えば、加工業者はインターネットで24時間生育状況をチェックでき、製品計画を立てやすくなる。また、生産農家も野菜を直接加工業者に納入でき、市場や卸業者に支払ってきた経費を削減できる。

   しかし、創業3年目でまだ黒字化できていない。システムに共鳴してくれた生産農家がまだ8件でなかなか拡大できないのだ。長年にわたり市場や卸業者を通していた中間過程をカットすることへの不安があるのだという。

評価された「困難に挑み続ける経営姿勢」

   さて、10人のプレゼンが終わり、大賞を決める審査が始まった。審査ポイントは「ビジネスの革新性」「実現可能かどうかの事業性」「人を惹きつける経営者力」の3点だ。「地域の中に根差し、一つのビジネスモデルになって欲しい」と午来さんの評価は高かった。加藤さんについては「この分野の事業は分からない。どの程度のビジネスモデルになるのか…」と評価が割れた。ただ、加藤さんについては「実際に話を聞いて、この人はやるなという感じがした」「ある程度の落ち着きと信頼と、この方だったらラーニング(学習)できる」という発言があった。このため審査は夜遅くまで続いたという。

   それから3週間後の6月19日に審査発表と表彰式が行われた。「女性起業家大賞は加藤百合子さんです」。優秀賞には午来さんが選ばれた。革新性や事業性以上に、困難に挑み続ける経営者の姿勢が創業期のビジネスには最も重要と判断されたらしい。

   大賞を得た加藤さんは1000万円の賞金のほかに、今後1年間銀行による経営相談が受けられる。加藤さんは「こんな嬉しいのは出産以来です。産みの苦しみの後の解放感でホッとしています」と喜びを語った。

   国谷裕子キャスター「やっぱり最後は人ですか」

   この問いに新事業コンサツタントの本荘修二氏は「経営者力以外にもいくつかの判断基準があったようですが、事業は人なりと言います。それに従ったよい判定と思います」という。

   本荘によると、ベンチャー企業に求められるのは粘りと柔軟性という。アメリカのベンチャー企業には「早く諦めろ」という言葉があるという。成果の上がらないアイデアにいつまでもしがみ付いていないで、早く方向転換しろという意味だそうだが、その半面、初心の志や使命を粘り強く持つ人間的な魅力のある人が成功するのだという。

モンブラン

NHKクローズアップ現代(2012年7月11日放送「密着!女性起業家1000万コンペ」)

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