契約書が存在しないテレビ制作現場の不思議―口頭了承でトラブル頻発

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   アメコミのヒーロー映画が続々と公開される。映画の中でヒーローたちは市民を守ってくれるが、現実の世界で自分を守ってくれるのは契約書である。婚約時に、離婚を考えて財産分与を契約するアメリカほどの裁判大国ではないものの、いつ自分が訴えられるかもわからない、そして訴えなくてはならない状況になるかもしれない。

   「そこまで厳密にやらなくても、まぁお互いに知らない仲ではないし、その時はなんとかやっていきましょう」なんて調子でやっていると、いざという時に事態を深刻化させてしまう。だから、仕事をする前に覚書などでもいいから、契約を交わして共通認識を持っておかないと困ることがある。

主演女優決まり撮影開始日に「ドラマ化許諾の白紙撤回」

   こんな当たり前なことなのに、テレビ関係でこうしたことが行われることはごくまれだ。ロケ番組が多くても、番組単位で出演者とスタッフに保険をかけるところは少ない。これは保険をかけたほうがいいなという時だけ、それぞれが保険加入申請をするか、スタッフの判断に任されている。

   とくに、国内ロケの場合は出演者決定もギリギリで、弾丸で撮ってくることも多く、申請が下りるまで待てないケースも生じてくる。

   バラエティー番組では仕方ないのだろうかなんて思っていたら、そうでもないらしい。先日も小説のドラマ化をめぐり、放送局が出版社を提訴した。主演女優まで決まり、撮影開始予定日になって出版社がドラマ化許諾を撤回したのだ。こんな最悪の事態になった要因の一つに、契約書を交わさず、担当者間の口頭での了承で物事を進めたことがあった。テレビドラマ化は作品完成後に契約書を交わすのが慣例で、これにしたがったものらしい。

   知人のドラマプロデューサーによると、似たようなケースはどこでもあるそうだ。大ヒットアニメでドラマから映画にまでなったあの作品も、原作者サイドと制作サイドの意見が折り合わず、放送を予定していた局では撮影直前に中止となった。他にも、戦争を描いた人気小説が映画化されるが、原作者と意見が合わず撮影延期となり、長期にわたって中断されたとのこと。準備段階でいろいろとあったらしいというのが、業界内のもっぱらの噂だ。このようなトラブルはあちこちで起こっているのに、それでも事前契約書はなかなか交わさない。

放送作家のギャラ金額も放送後の事後了承

   とまぁこんな話をしているが、私も火の粉が降りかかったことがある。番組は生き物、当初予定していたものとは違ってくることが少なくない。制作途中ではあるが、まだ間に合うかもしれないと、スタッフと覚書を交わすかかわさないかの相談の場がもたれた。あの時は全員顔が引きつり、普段は温厚なプロデューサーも言葉がきつかったことを思い出す。

   番組で事前に放送作家がギャラの契約を交わしたという話も聞いたことがない。たいていが放送後に番組担当デスクかプロデューサーから、こんな電話がかかってくる。

「今回は大変申し訳ないんですが、これぐらいでいかがでしょうかあ。ホ~ント申し訳ありません!ご存知でしょうが、いろいろと番組でもロケやら再現やらでお金がかかりまして、××円でいかがでしょう」

   事前契約したとしたら、金額はどうなっていたのかわからない。この仕事は業績を上げると、プロデューサーやディレクターから「先生、先生」と言われるけれど、この扱いが全てを物語っている。腹の中では、契約するに足らないと思われているのかしら。

モジョっこ

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