2024年 4月 26日 (金)

原発依存率の意見聴取会「なし崩し再稼働・長期維持」への既成事実作りか

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   おととい15日(2012年7月)ときのう16日に仙台市と名古屋市で開かれた、将来のエネルギー政策について国民の声を聞く政府主催の意見聴取会に電力会社の社員が参加、意見を述べたことから両会場とも紛糾する場面があった。

中部電力社員が発言者「この先5年、10年、福島原発被害なし」

   この意見聴取会は2030年の原発依存度として、国が示した「0%」「15%」「20~25%」の3つの案に対し、それぞれを支持する立場から抽選で選ばれた3人ずつの計9人が意見を述べるというもの。リポーターの清水貴之によると、名古屋会場の発言希望者は「0%」が106人、「15%」が18人、「20~25%」37人。37人のうちの3人の1人が中部電力の社員だった。

   この社員は「中部電力に勤める会社員です」と名乗り、「個人として意見を述べたい」として「福島原発の事故で放射能の直接的な影響で亡くなった人は1人もいません。今後5年、10年たってもこの状況は変わらないと考えています。このままでは日本は衰退の一途をたどると思います」などと述べた。これに対し、会場では「うそだろ!」「うそをつけ!」「回しものか、お前は!」といったヤジが飛んだ。

   終了後も「当事者の電力会社の人は発言するべきではない」「われわれは電力会社のアリバイ作りに利用されたのか」「(電力会社社員の発言が)きのう(15日)は仙台、きよう(16日)は名古屋、そんなに偶然が続くのか」といった不満や批判が出た。仙台でも東北電力の幹部が発言し一時混乱した。

質疑応答もなく全国8か所で実施して8月に早くも結論

   司会の羽鳥慎一「抽選はちゃんと行われていると思うんですが」

   月刊誌『ゲーテ』編集長の舘野晴彦は「素朴な疑問だが、これは電力会社と一般の利用者が同じレベルで話す機会なのか。電力会社が入れば、抽選の結果といわれても怪しいと思わざるを得ない」と首をかしげる。城西国際大学非常勤講師の宮田佳代子は「放射能で直接的な死者はなくても、大切なことは、生活を奪われ、ふるさとを奪われ、生きる気力さえなくしている人がいるということ」と話す。スピードスケート金メダリストの清水宏保「自殺者が出ている」と、「死者が出ていない」という発言に反発した。

   そもそも、電力会社の経営者も従業員もいまは謙虚に国民の声を聞く時期のはずだ。傍聴者として参加するのならともかく、発言者として出ていって原発拡大、反原発批判をぶち上げる立場にはない。今回の彼らの発言は、福島原発事故について電力会社として反省もしてなければ、責任も感じていない証左だろう。反原発の広がりが収まったら、また元通りと考えているに違いない。

   政府は今後、意見聴取会を全国8会場で開催し、8月中に結論を出すことにしている。これについても舘野は「意見を述べるといっても1人10分ぐらい、質疑応答もない。これで国民の意見を聞きましたと既成事実にして結論を出すのは恐ろしいとだ」と語り、宮田も「国民の議論を深めるという趣旨だったのに、もともとの目的から外れてしまっている」と厳しく批判した。

文   一ツ石| 似顔絵 池田マコト
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