『テイク・ディス・ワルツ』

しょぼい青年に燃え上がった平凡な地味妻…あまりに切ない最後の選択

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(C)2011 Joe’s Daughter Inc.All Rights Reserved.
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結婚して5年がたつ共働きの夫婦マーゴとルーは、子どもはいないが仲睦まじく穏やかな日々を過ごしていた。そんなある日、マーゴは出張先で情熱的な青年ダニエルに出会い、2人は惹かれ合う。さらに、ダニエルが偶然にも自宅の向かいに住んでいることを知り、マーゴの心は揺れ動く。

   監督と脚本は「アウェイ・フロム・ハー 君を想う」で27歳で長編映画監督デビューを果たしたカナダの女優サラ・ポーリーである。マーゴ役を「マリリン 7日間の恋」のミシェル・ウィリアムズ、夫役を「50/50 フィフティ・フィフティ」のセス・ローゲンが好演している。

美しさと虚しさをパズルのように組合せ

   マーゴの恋の行方に加え、いつもどこか物憂げなマーゴの表情、シャワールームで若いマーゴと老いた女性がオールヌードで並ぶシーンなど、女性の心と体の描写がとても細かく、ハッとさせられる。かと思えば、朝の浜辺、逆光の白い灯台、青いワンピースと真っ赤なスイカ、黄色いギンガムチェックのシャツに短いジーンズなど、色彩豊かな美しい映像もたっぷり織り交ぜ、主人公の日常の美しさとむなしさをまるでパズルのように組み合わせて見せる。こんなところに監督のセンスが光る。本作のタイトルでもあるレナード・エーコンの「テイク・ディス・ワルツ」が、劇中でとても効果的に使われているのも見どころだ。

   それにしても見るからに温厚で気の優しそうな、ちょいデブの夫はまだしも、ロマンスの相手ダニエルも、イケメンでもなけりゃ、財力もない、とくにパッとしない男。リキシャを引いて生計を立て、自宅は趣味で描いた自分の絵でいっぱいという、どちらかといえばアヤシい自由人である。わざわざ危険を冒してまでダニエルにはまっていくマーゴにはちょっと同情しづらいが、まぁ、誰が見ても惚れるような3高男じゃないからこそリアリティーがあるのだろう。だってあなたの周りにもいますよね、本人はかわいいのになぜか男を見る目がないモッタイナイ友達が…。

   新しいものは必ず古くなる。一方、古いものは丁寧に磨けば味わいが増す。平凡な日常を忘れさせてくれる新しい恋は、一時であるからこそ甘美なもの。そして、どんな恋も成就してしまえば、ときめきはやがて日常に埋もれてしまう。最後の最後で大胆な選択をしたマーゴ。果たして彼女の選択は正しかったのかな。せつない余韻が残る。

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   おススメ度:☆☆☆☆

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