2018年 7月 20日 (金)

『あなたへ』
人はみんな帰るところを求めて旅に出る…高倉健6年ぶり主演で問う人生とはなにか

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(C)「あなたへ」製作委員会
(C)「あなたへ」製作委員会

高倉健が6年ぶりの主演ということで、田中裕子、佐藤浩市、草彅剛、余貴美子、綾瀬はるか、三浦貴大、大滝秀治、長塚京三、原田美枝子、浅野忠信、ビートたけし…と、幅広い世代のそれぞれのトップ俳優・タレントが顔を揃えた。高倉健とスタッフの息の合ったコンビネーションから生まれる安心感と、次に誰が出てくるのかというワクワクが楽しいロードムービーだ。

先立った妻が残した「局留め郵便」そこには何が書かれているのか

   富山の刑務所の指導技官として働く倉科英二(高倉健)は、50歳を前に刑務所に慰問に来ていた歌手、洋子(田中裕子)と結婚する。彼に独身を貫く人という印象をもっていた周囲は驚く。しかし、洋子は間もなく53歳でこの世を去ってしまう。悲嘆に暮れる倉科に洋子が残した絵手紙が届いた。遺骨は故郷の海に散骨して欲しいと書かれていた。そしてもう1通、洋子の故郷である長崎県平戸市の郵便局留めで届いているという。

   「妻はなぜ、こういう形に…」

   戸惑いながら倉科は妻の遺骨と旅に出た。

   阪本順治監督の「魂萌え!」も配偶者の秘密を解き明かす旅の映画で、亡くなった夫の携帯電話を見事に使っていたが、「あなたへ」では局留め郵便という謎が話を引っ張っていく。10日間という受け取り期限のある局留め郵便が旅の目的と意味をはっきりとさせ、ビートたけし演じる杉野の「放浪と旅の違いは目的があるかないかです」というセリフにも通じている。さらに杉野は「帰るところがあるかないか」ともいう。旅を人生と言い替えてもいい。これがこの映画のテーマだ。

ロケ地・富山刑務所の完成披露試写会で涙した健さん

   杉野も妻を亡くし、帰るべき場所を求めて旅とも放浪ともつかない暮らしをしている。草彅剛演じる田宮は妻と子どもを残して弁当の出張販売で全国を回りながらも、居場所を探している。佐藤浩市演じる田宮の部下・南原もそんな一人だ。みんな明るく気立て良く振る舞いながら、心に満たされない思いを抱え、自分の居場所を迷いながら探している。目的と帰る場所を見つけて、放浪者から旅人になるべくもがいているのだ。倉科もそんな人々とのふれあいの中で、妻亡き世界での新たな居場所を見つけようともがく。

   映画公開前、ロケ地となった富山刑務所で完成披露試写会を行った際、高倉健は受刑者に向けて「早く『あなた』にとっての大切な人のところへ帰ってあげてください」と語り、受刑者と共に涙したという。

   人生は旅であるというが、旅とは何かという問いにまで踏み込んだ映画は少ない。閉塞感漂う現代を生きる人々の苦悩を、美しい日本の風景の中に切り取ることで、それぞれの帰る場所をやさしく提示してくれる。幅広い世代に見て欲しい映画だ。

野崎芳史

   おススメ度☆☆☆☆

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