山本美香さん殺害された「シリア内戦」ドロ沼―容赦ない弾圧と反政府側分裂

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   アラブの春に触発され始まったシリア内戦は、アサド政権打倒で立ちあがった反体制勢力に対し政権側が弾圧強化を続けて1年半が経過した。犠牲者の数は2万人を超え、隣国トルコなどへの避難民は23万人に達している。アサド政権を崩壊に追い込み、新しい政権樹立を目指したはずのシリア国民評議会も激しい内部対立に明け暮れ、出口の見えない状態が続く。

中東パワーバランスに乗って延命するアサド政権

   反体制勢力の自由シリア軍は金がないので兵器が買えず、政府軍を離反した兵士に一般の若者が加わって市街地でゲリラ戦を展開する。これに対し、政権側は戦闘機による空爆や戦車まで導入し容赦ない掃討戦を行っている。とくに、国連監視団が撤退した先月(2012年8月)以降は、国際社会の批判を無視した残忍な弾圧がひどくなっており、それがバレるのを怖れ、日本人ジャーナリスト・山本美香のように外国人ジャーナリストの殺害指示すら出ているという。

   なぜシリア内戦に歯止めがかからないのか。キャスターの国谷裕子がシリアを取り巻く周辺国の動きについて説明をした。背景にあるのは、複雑な中東の対立構造で、その中でシリアがパワーバランスの要になっている現実があるからだという。具体的には、アサド政権をイランとレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラが支援しており。どちらも反米、反イスラエルで固まっている。一方、反体制勢力を支持するのがサウジアラビア、カタール、トルコ。こちらは親米で、とくにサウジとカタールはイランの台頭を警戒している。双方がそうした国々から武器や資金の供給を受けていることも、内戦拡大を助長している。

   加えて、自由シリア軍の背後にあるシリア国民評議会が内部分裂を強めており、アサド政権に取って代わるシリアの将来像が描けない。トルコのイスタンブールに拠点を置く国民評議会の最大勢力がムスリム同胞団で、アサド政権を倒したあとにイスラム教に基づいた国づくりを目指している。ムスリム同胞団に対抗する勢力が世俗派グループで、同胞団が政治に強い影響力を持つことを警戒している。

   前国民評議会議長のブルハシ・ガリューンは、「この対立が続く限り、新たな国づくりの展望は開けない」と言い、自由シリア軍の幹部も「国際社会から支援を取り付けるためには、もっと真剣に努力すべきだ」と国民評議会の分裂を批判する。

どちらも勝てないまま長期化―犠牲だけが増える最悪シナリオ

   国谷の「なぜアサド政権打倒の一点でまとまれないのでしょうか」という疑問に、シリア情勢に詳しい東京外大の青山弘之准教授がこう答えた。

   「紛争初期の段階ならそれもできたと思いますが、さまざまな要素が入ってしまって混乱している。たとえば、アサド政権を倒すかどうか、平和的にデモで倒すのか軍事的な手段で倒すのか、倒すのに外国の支援はいるのかいらないのかなど、倒し方でまず意見が分かれているんです」

   国谷「今後、シリア情勢で起こる可能性が高いシナリオとはどんなものでしょうか」

   青山准教授「反体制勢力の分裂状況、アサド政権側の容赦ない弾圧で対立は長期化しており、どちらかが完全に勝つということはあり得ないでしょう。最悪の場合、湾岸戦争後のイラクのように、強権支配が都市部にあり、空洞化した周辺部では反体制勢力が活動する内戦状況が続いて、日々、多数の人命が失われる。最悪だけど、一番起こりうるシナリオかと思いますね」

   それでも国際社会は傍観しているのか。厳しく問われる時がきているように思える。

モンブラン

NHKクローズアップ現代(2012年9月5日放送「混迷シリア 見えない出口」)

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