J-CAST ニュース ビジネス & メディアウォッチ
閉じる

福島原発作業員が辞めていく「給料下げられ食事も自前。危険なだけで生活できない」

   高い放射線被曝を受けるかもしれないという恐怖と戦いながら、東京電力福島第一原子力発電所事故の処理に当たっている原発作業員。筆者の縁者も福島にいる。彼は事故が起きる前までは原発とは無関係の東電関連会社に勤務していた。

   しかし、事故後は事故の緊急対応要員として福島に動員された。そして、現在はほぼ福島常駐という状態だ。どんな作業に従事しているのかと問いかけても、多くを語ろうとしない。話してはならないという雰囲気が伝わってくる。こうした中、原発作業員に離職者が相次いでいる。

月25万円が今じゃ20万円。除染作業の方が高い日給

   キャスターの国谷裕子は「福島の事故は人類がこれまで経験したことのない事故で、廃炉までは40年かかるといわれています。しかし、廃炉作業要員は少なくなっており、廃炉にするための技術も人材の確保も見通しが立っていません」と語る。

   ある現役の作業員は毎日車で2時間かけて現場に入る。途中の事務所で防護服に着替えるが、「現場に入るときは小走りで入りますが、30分作業をしたら1時間ぐらいの休憩を取らないと心配になります。この先、どうなるかまったく見えないので不安です」と証言した。別の中年の作業員も「毎日、周囲の作業員たちが辞めていく。それまでは無料だった宿舎から出ろといわれた。食費も自前でしろと通告された。去年(2011年)までは月に25万円もらっていた給料も、20万円前後まで減らされた。家族もいて、これでは生活できない」と嘆いた。

   取材を担当した野津原有三(NHK社会部記者)は「以前なら作業員の月給は日給換算で1万5000円前後でしたが、いまは1万円前後まで減らされています。地元のハローワークなどを取材したところ、除染作業などの方が日給は高い。原発作業員を辞め、そうした職種に転職する人が多いようです」と伝えた。

東電幹部「このままでは原発作業に精通している人材いなくなる」

   国谷「なぜ作業員の待遇が悪化しているのですか」

   野津原「これまでは原発作業を直接受注する元請けと、その下に第1次下請け、第2次下請けとなっていました。これで何とか作業員の人材が確保されていましたが、この構造が崩れつつあります」

   ある元請け企業幹部は「事故後、東電は競争入札を導入して厳しいコスト削減を求めてきた。うちの場合は3割の経費削減が行われ、スタッフの給料を減らさざるを得なかった」という。東電の幹部は「このままでは原発作業に精通している人材がいなくなる。若い人材を確保して教育し、一人前の作業員に育て上げればならないが、状況は厳しい」という。

   国谷が「危険な作業と待遇の悪化、この連鎖を断ち切る方法はありませんか」とゲストの中央大学法科大学院・安念潤司教授に聞く。「まず危険を顧みず作業に当たってくれている作業員に感謝の気持ちを忘れてはいけません。作業員の賃金を確保することが重要ですが、そのためには電気料金の再値上げか税金の投入かの2つしかありません。電力会社も資産の売却や経費の削減に取り組む必要があり、何よりも国が原発を今後どうするかを早急に決めることが重要です」

   原発を廃炉にするための作業員すら確保が難しくなっているのに、さらに新設・再稼働をすすめようという政府、自民党は、本気でそれが可能だと考えているのだろうか。

ナオジン

NHKクローズアップ現代(2012年11月5日放送「原発作業員が去っていく 福島第一原発『廃炉』の現実」)