市川猿翁・香川照之「親子が歩く修羅の道」と言われても…ピンと来なかった凡庸ドキュメンタリー

印刷

「父と子 市川猿翁・香川照之 二人の挑戦」(NHK総合)2013年1月6日21時30分~

   ナレーションの最後にあった詠嘆調の「2人は歌舞伎役者という修羅の道を歩いてゆく」という意味が筆者には分からない。そりゃあ、生まれながらに世襲と決められた家業は、選択の余地もなく辛いこともあろうが、もし好きであったらこんなに恵まれた環境もない。すぐそばに師である親がいて、職住近接の稽古場があり、売り込みに奔走する労力もいらず失業もない。なぜ修羅なのか聞きたい。
   先代・市川猿之助が浜木綿子と離婚して、幼くして父なし子で育った香川照之が、母も女優のために孤独で引きこもりがちな少年期を過ごしたのはよく知られている。また、長じて父に会いに行った時、冷たく「親でもない子でもない」と追い返されたエピソードも有名だ。それが先代・猿之助の脳梗塞以後、徐々に和解して、今回は照之の市川中車襲名と猿翁披露舞台復帰を結末に、昨年3月から今年の正月興行までの300日に密着したドキュメントである。
   稽古も礼儀作法も厳しい歌舞伎界は、家庭の中の密着ドキュメントでもドラマチックだから、普通に撮ってさえいれば物語になるし、NHKの独断場(視聴率を気にする民放ではあり得ない)で、ずるいといえばずるいのだ。加えて、見ているこちらは過去の2人の確執を知っていて、間に亡くなった藤間紫(今回は触れず)の存在を感じてしまうので、さらに覗き見たくなる。歪んだ顔に白粉を塗って息子や孫に稽古をつける猿翁そのものが修羅と言えば修羅なのか。

(黄蘭)

採点:0.5
  • コメント・口コミ
  • Facebook
  • twitter

このエントリーはコメント・口コミ受付を終了しました。

注目情報PR
追悼

お知らせ

電子書籍 フジ三太郎とサトウサンペイ 好評発売中