復旧手付かず大震災地滑り住宅街―境界線ずれ住民同士で対立

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   東日本大震災で津波でなく地震の被害が集中したのは、内陸部の山や谷を切り拓き盛土にした丘陵地の住宅街だった。そこは2年経過した今も復旧が思うように進んでいない。震度6の激しい揺れによる地滑りや地割れで土地が動き、大きく変動した隣家との境界線を巡って、住民同士の意見が対立しまとまらないのだ。

   脆弱な盛土の補強技術はすでに確立されているが、地震で地滑りが起きた際に生じる境界線の問題は、被害を受けた住民同士の合意形成しか方法はない。境界線をめぐり、意見がまとまらず復旧が遅れている仙台市郊外にある住宅街のケースを追った。

以前に戻す費用1000万円!ローン抱えて払えない

   高度成長期に大都市近郊の丘陵地を切り崩し、その土で谷を埋めて作られたベッドタウンが、仙台市中心部の半径5キロ以内に5000か所ある。中心部から車で10分、震災前には閑静な住宅地だった折立地区を震度6弱の揺れが襲った。盛土部分に地滑りが起き51軒に深刻な被害が出た。

   68歳の女性が住む家は、地滑りで隣の塀がせり出し家に迫っている。家の片側は12センチ沈んだまま。さらに深刻なのは、地滑りで境界線が2メートルずれて隣の家の境界線内に入り込んだことだ。家を元の場所に戻すには「曳き家」と呼ばれる方法で移動させるほか、地面の補強工事が必要だ。費用は1000万円以上になる。住宅ローンの返済が残っているなかではとても無理な話で、女性は地滑り後の今の場所を境界にすることを主張している。

   ところが、女性の家の前の斜面下に住む家は、地滑りによるズレで土地が狭くなったために境界線を元の位置に戻すことを主張しており、意見は食い違ったままで復旧が進まないのだ。

   仙台市では3月(2013年)からこうした宅地の復旧工事に取り組み始めた。工事費用の9割を国が負担し、来年度中に工事を終わらせる方針だ。ただ、境界線トラブルがある場合、復旧工事は住民同士の合意が前提で、期間中に合意が得られなければ工事は自己負担になる。

   では、どうやって合意形成に持っていくか。地震による地滑りで同様の境界線問題を抱えながら、短期間に解決したケースを取り上げた。2008年の新潟県中越沖地震で、柏崎市の山本団地も大きな被害を受けた。130世帯のうち49戸で大きな地滑りがあったが、2年間で復旧を完了させた。短期復旧にこぎつけたのは境界線トラブルをスムーズに解決できたからだといわれている。

   主導したのは柏崎市。まず道路と家が接する境界線は道路復旧を優先させ、地滑りでズレた境界線を新たな境界線と決めた。一方、家と家との境界線は住民同士の話し合いで決め、多少の誤差には目をつぶることにしたという。その結果、2年間で今後の地震に備えた盛土の地盤改良工事も完成させることができた。

危険な盛り土宅地は全国1万3000か所

   丘陵地の宅地は全国に1万3000か所ある。そのうち危険な盛土がどこにあるか。国は地震に備えて分布図の作成に取り組むよう自治体に要請しているが、始めた自治体はわずか3分の1以下だ。危険な盛土の洗い出しをするだけでも費用がかかるほか、分布図を公表すると地価に影響するとあって住民の抵抗が強いからだ。

   国谷裕子キャスター「こうした宅地の耐震化はこれまで置き去りにされてきました。どうしたらいいのでしょうか」

   盛土の宅地造成問題に詳しい東京電機大学の安田進教授はこう解説する。「盛土は谷を埋めるために地下水が出ます。暗渠を地下に作ったり、滑り止めなどさまざまな補強技術が確立されていますが、それにはまず住民が危険性を認識することが大事になります。対策はあるので、国や自治体、住民が一体になって取り組む必要がありますね」

   地価がどうだなど目先の損得を考える前に、地震が起きたときの対策を先に立てるべきだろう。地震がきたら住む家がなくなるかもしれないのだから・・・。

モンブラン

NHKクローズアップ現代(2013年3月6日放送「丘陵住宅地に潜む危機 被災地からの警告」)

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