死に方ぐらいが自分で決めたい…本人の意思より家族の「延命要請」優先の医療現場

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「延命。あれは私、断ります。分かんなくて生かしてもらうのはいや。穏やかで静かな最期を迎えたい」

   人生の最期をどう迎えたいか。生前に意思表示する高齢者が増えているという。希望通りの最期をどうすれば迎えられるか、具体的な方法を考える勉強会も各地で開かれ、延命治療を希望するかしないか、「事前希望書」に意思表示を書く病院も出現している。

   しかし、「その時」を迎えると希望が叶うのはきわめて難しいらしい。いざ容体急変すると、医師は家族から訴えられるのではないかと不安に駆られ、また使命感から延命治療をせざるを得ないのが現実だという。誰もが穏やかで静かな最期を望む一方、少しでも長生きをと願う家族の気持ちがある。その狭間で悩む医師を追った。

7割が「延命治療希望しない」

   厚生労働省が2008年に行った調査によると、「延命治療を希望しない」37.1%、「どちらかというと希望しない」33.9%、「延命治療を希望する」11%、「わからない」14.7%、「無回答」3.2%で、希望しない人がこの10年で2倍に増えていた。

   ただ、本人の意思に反して望んでいない延命治療が行われるケースが多いという。東京で最も救急患者の受け入れ数が多い救急救命センターの都立墨東病院(東京都墨田区)は、受け入れ数年間2500人のうち8割が高齢者だ。救急医の濱邊祐一医師はこう語る。

   「もう寿命だと思う高齢者でも、救急車で運ばれてきた以上、医師は手を尽くさざるを得ません。書面で本人が意思表示をしていても、家族から訴えられるリスクがあり、延命治療はやめられない」

   たしかに、家族の感情は理屈では割り切れないが、濱邊医師は家族が日頃から本人の希望を明確に把握し、最期を受け入れる準備に取り組んでおくことが大事だと指摘する。終末医療に詳しく、自らも在宅医療に取り組んでいる新田國夫医師(日本臨床倫理学会理事長)に、キャスターの国谷裕子が「患者本人の意思表示があったとしても、家族から助かって欲しいという声が出てきたとき、どっちを優先するか難しいでしょうね」と聞く。

「日常よくある話ですが、現在では標準的医療が選択されるんです。標準的医療というのは、人工呼吸器や人工栄養とかの医療になるわけですが、それによってなんとなく世間の標準としての満足感を得るということから選択されることが多いんです。
   それに家族(が望む延命治療)には利害関係もからみます。たとえば、年金目的とか相続目的などいろいろ問題が出てきます。しかし、大切なのは本人の意思、最大の決定権になると思います」

「事前希望書」で患者の意思明確化

   リスク回避の苦肉の策といった印象だが、延命治療を望んでいなくても、なかなか本人の意志を貫くことができない中で、どうすれば最期の希望を叶えることができるか。

   地域の医療関係機関と連携して、希望をかなえるように動き始めたところがある。愛知県大府市の国立長寿医療研究センターは、6年前から終末期の医療について、患者の希望を事前に確認する「事前希望書」に取り組んでいる。当初は病院内だけのものだったため、患者が退院して他の病院で治療を受けると役に立たなかった。事前希望書を書いた患者を追跡調査したところ、亡くなった20人のうち3人が他の病院で亡くなり事前希望書は生かされなかった。

   この穴を埋めるために、責任者である三浦久幸在宅連携医療部長は地域の医療機関と連携を進め、事前希望書の内容を地域で共有できるように取り組んでいる。事前希望書を電子化しサーバーに保管して、救急車でどの病院に運ばれても、救急隊員や搬送先の医師がそれを閲覧できるようにする計画だ。

   三浦医師は家族との間の迷いや混乱が生じないようなシステムにも取り組んでいる。一つは、家族のなかから一人、本人の代理人を事前に決め、事前希望書に署名してもらうことで実効力を持たせることにした。もう一つは、本人が人生において最も大切にしていることは何かを書いてもらう。家族や医師がそれを共有して本人の意識がなくなった後でも本人の希望が叶えられるようにした。

国谷「事前希望書に人生観まで踏み込んで書くことの重要性をどう見ますか」
新田医師「普通、医師のカルテは血圧とかの数値しか書かれていません。しかし、日常生活の大きな流れ中で判断するためには、人生観を書き込むことがとても重要な取り組みになってきます。私たちも是非やらなければいけないと思っています」

   高齢化社会が進む中で、終末医療の現場で本人の希望に叶った最期をどう実現するか。本人、家族、医師が真剣に考える時代を迎えたようだ。

モンブラン

   *NHKクローズアップ現代(2013年4月3日放送「『凛(りん)とした最期』を迎えたい~本人の希望をかなえるには~」)

文   モンブラン
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