番組制作の現場はとにかく「気づかい」飲み会でもついそのクセが出て女のバトル

印刷

   どうしても声が大きくなる。「あんっ?」と聞き返されてはダメ。やるなら堂々と。間違っていたとしても、それは気にせず大きな声で喋る。おままごとで番組を作っているわけではない。わかりやすく簡潔に大きな声で指示を出していく女性ディレクター。

   当然、言葉づかいも荒くなる。あれはどうしてなんだろう。上品な言葉遣いは対面距離が近いところから生まれている気がする。演説ではないけれど、大勢の人に向かって指示を出す、時間に追われている時、気持ちが高ぶっている時はたいてい言葉が短く荒々しくなっていく。

上司から苦言「仕事終わったんだしそこまでしなくていいよ」

   仕事を始めたばかりの頃は「ケツ」に驚いたけれど、気がつけば番組終わりや時間に限りがあるかどうかを人に聞くときは、この一言を普通に使うようになる。そして、注意される。女の子なんだから「ケツ」なんて言わないの、せめて「オシリ」とかにしなさいと。そっちだと上品で許されるの?なんだか不思議な言いわけじみた注意だけれど。

   そして叩きこまれるのが「気づかい」。とにかく気を使うことだと口すっぱく先輩は教えてくれた。使っても使ってもなくならないのが気づかい。それならば、頭を働かせるだけ働かせて気を使えと。だから、普段の暮らしでも気づかいは自然と身に着くようになる。

   例えば食事に行っても、配膳や料理を取り分けたり、注文も率先して行う。これが番組スタッフの飲み会になると、かなり見ていておもしろい。自分もそそくさと全員にお酒を渡したりするほうだけれど、上には上がいる。真っ先に全員におしぼりを配り、メニューを取りまとめ店員に伝えにいく。こういう女性が2人ぐらいいると、どっちが先に店員に声をかけられるか、出てきた料理を取り分けるかでちょっとしたバトルになる。でも、あまりやると他の女性陣から反感を買うことになるので、ときどきお互いの食事具合や呑み具合をチラっと見ながらサボる。

   そして、食事の席になんにも動けない年下の女の子がいると、イラ~っとする。「美味しいです~」なんて可愛い声で言いながら食事をしている年下を心の中で踏みつぶしながら、顔は笑顔でみんなの皿に料理を取り分けていく。そうこうしているうちに、上司から仕事は終わったしそこまで気をつかわなくていいよ、普通にしていてくれないかと若干苦言めいたことを言われる始末。なんだか気づかいしすぎて気まずくなるのがオチだ。

気づかい上級者になると「ここまでやるのか!」

   同じような環境で働いていても、そうならない女性もいるもの。「あんっ?」と聞き返したくなるような小声でいつも説明をする女性ディレクター。華奢な体にテロンとしたナイロンのワンピースをまとい、爪さきには可憐な花が咲き、足元はピンヒールに近いハイヒールを履いている。それでもって小声で番組趣旨説明するもんだから、こっちは「そこのおじょうちゃん気どりのババア、デケェ声で話せってんだよ、聞こえねぇっつーの」とペンでも投げてやりたい気持ちになってくる。心の中ではそんなことを叫びながらも彼女の説明をなんとか聞こうと耳を傾ける。

   そんな時、ある男性が小声の彼女に質問をした。すると、彼女は長い髪が相手の肩にかかるぐらいの距離まで近寄って、質問者の言い分を聞いている。うわ~、これで男は落ちていくのね。なんかいい匂いとかしてそうだし。完全に嫉妬。その時の私は嫉妬の塊になっていた。

   あ~いうのが一番したたかな女性だ。気を使えと言われ続けてきたけれど、最後の詰めが甘かった。足りなかったのはこれ、気づかいできないように見せる気づかいってやつ。ややこしいわっとつっこみを入れたくなってしまうが、これができていたら、今頃人生違っていたかもしれない。いったい何が彼女と私とでは違ったんだろう。聞いたらいい匂いをさせながら小声で教えてくれるかもしれない。

モジョっこ

  • コメント・口コミ
  • Facebook
  • twitter
コメント・口コミを投稿する
コメント・口コミを入力
ハンドルネーム
コメント・口コミ
   

※誹謗中傷や差別的発言、不愉快にさせるようなコメント・口コミは掲載しない場合があります。
コメント・口コミの掲載基準については、コメント・口コミに関する諸注意をご一読ください。

注目情報PR
追悼
シニアの健康ライフ
Slownetからのおすすめ記事(提携)

お知らせ

電子書籍 フジ三太郎とサトウサンペイ 好評発売中