2024年 4月 25日 (木)

民主化カリスマと現実路線の板挟みスー・チー女史―軍部接近に国民に失望感

「信念をもって自らの力で道を切り拓くのです。たゆまない努力、それが人生なのです」

   来日中のアウン・サン・スー・チー女史が番組キャスターの国谷裕子にこう語った。自らの人生を振り返るとともに国民に向けた叱咤激励とも受け取れる。

   ミヤンマーで民主化への闘いに半生を捧げてきただスー・チーが政治家になって1年たった。ミャンマーの民主化はまだ始まったばかりだが、いま大きな壁に直面している。立ちはだかるのは議会で圧倒的多数を占める軍人と与党だ。スー・チーが政治家として国の姿を大きく変えるには、こうした権力に接近し交渉によって変えていくしかない。

   しかし、スー・チーが現実路線を選択し始めたことへの批判が国民から出始めている。冒頭の言葉は、そうした国民の批判に対する答えでもあるのだろう。

議会議席わずか6%の弱小野党の党首

   「ビルマ建国の父」といわれたアウン・サン将軍の娘が、半世紀続いた軍事政権によって3度にわたり自宅軟禁された期間は延べ15年になる。海外で暮らす夫や子どもたちに会うことができないという犠牲も伴った。ようやく軟禁が解かれ外出や発言が自由にできるようになったのは2年半前である。昨年(2012年)はじめて国会議員になり、最大野党の国民民主連盟(NLD)党首として活動している。

   ただ、民政に移管し発言が自由になったとはいえ、国会の議席の4分の1は無条件に軍人に割り当てられ、軍事政権とつながりが深かった与党が圧倒的議席を占める。NLDはわずか6%に過ぎない。

   ミヤンマーの憲法を民主的なものに変えたいというのがスー・チーの大きな目標だが、そのためには2年後の選挙で自ら率いる党が勝利し、大統領として国づくりの舵取りを担いたいという意欲を持っているという。国谷の問いに答えたスー・チーの国の将来を切り拓こうとする信念は、ゆるぎないもののように見える。

―ミヤンマーの民主化は進んでいると考えますか。

「議会改革という意味では大変満足しています。議会で起こっていることはテレビ放送され、透明性が高まっていますからね。人びとが議会を批判できるようになり、議会の動きも早まりました。でも、本当の改革とは国民の生活が変わることで、それはまだ実現できていません」

―本格的な民主化のためには、いま以上に権力を委譲するように軍を説得する必要がありますが、どのような戦略を立てているのでしょう。

「私は軍に対して権力を委譲するよう求めているわけではありません。軍としてより価値のある役割があることを理解して欲しいということなんです。頼りにされ、信頼され、愛される軍ということです」

―2015年には選挙があります。憲法改正に必要な議席の確保を目指していると思われますが、目標を達成できる見通しはありますか。

「今の憲法は世界でもっとも改正が難しい憲法だそうです。改正のための条件がこんなに厳しいものは他にありません。かりに私の党が軍以外に割り当てられた議席のすべてを獲得しても、残り4分の1は軍人です。選挙に勝つだけでなく、軍の支持を得ることが大事なのです」
文   モンブラン
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