2024年 4月 19日 (金)

予防接種後進国ニッポン!風疹大流行もワクチン「自己負担」「任意受診」のツケ

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   風疹が爆発的に流行している。4月(2013年)までに5000人を超え、昨年の30倍以上だ。東京都の感染症情報センターがまとめた患者のグラフを見ると、感染者の大半が大人で、男性は20代から40代、女性は20代がほとんどである。国のワクチン政策の転換で、子どものころにワクチン接種を受けなかった「谷間の世代」と呼ばれる人たちだ。

   34歳から51歳までの世代は接種の対象は女子だけだった。そのため男性は免疫がない人が多い。次が23歳から33歳までの世代で、男女ともに接種の対象となったが、女性の患者はむしろ多く、男性もあまり減っていない。実はこのときワクチン行政に大きな変更があった。

   80年代から90年代にかけて相次いだ予防接種による死亡・後遺症をめぐる裁判で、国は立て続けに負けた。厚生省は法改正をしてそれまで義務であった予防接種を「受けるよう務める」と個人の判断に委ね、学校での集団接種もなくなって接種率が大きく低下したのだ。これについて、厚生労働省は「国民の目が副作用というネガティブな部分にいった。行政はそれを無視して接種を進めることはできない」という。

欧米からは「日本は感染症輸出国」

   9年前の大流行も同じ「世代」が問題だった。このとき厚労省は専門家グループに対応策の検討を依頼した。医師の宮崎千明さんは「世代問題」の危険を指摘して、この世代への予防接種を提言したが、国は何もしなかった。「総務省から財務省までの意志が固まらないと国は動かない」と嘆く。

   今年はすでに10人の赤ちゃんに障害が認められている。無策の結果だ。埼玉の30歳の女性は風疹感染で長男に難聴が出た。「1本のワクチンを受けなかったのは、私の責任なの?」

   おたふく風邪、水ぼうそう、B型肝炎、肺炎球菌(成人)のワクチン接種は、欧米では政府が実施し、費用も公費負担だが、日本では幼児期をはずれると個人に委ねられ費用も原則自己負担だ。接種率が低く「感染症輸出国」とささやかれている。

   動かない国に先だって、東京・墨田区は接種への補助(無料)を始めたが、予算は限られ対象は妊娠を希望する女性とその夫だけだ。区をあげて接種をうながしているが、1か月半で想定の4割しかいかなかった。「自治体だけでは限界がある」

   新潟大学大学院の齋藤昭彦教授は「ワクチンの効果の方は病気がなくなるから目に見えなくなる。逆に副作用の方が目についてしまう。はるかに大きな効用の方に目を向けてほしい」という。

アメリカの風疹患者は年間10人!国を挙げて接種キャンペーン

   アメリカは年間の風疹患者は10人と極めて少ない。国を挙げて感染症に取り組んできた成果だ。先月(2013年4月)、ネバダ州で行われたワクチン接種会場はスターウォーズのキャラが登場するなどお祭り騒ぎだった。この日、13種類のワクチンを300人が受けた。政府は10年ごとにワクチン計画を作り、種類ごとの接種目標を決める。自治体には各人の接種記録がデータベース化されており、決められた接種を受けていないと幼稚園や学校も入れない。

   この背景には60年代の悲劇があった。風疹の大流行で2万人の赤ちゃんに障害が出た。まだワクチンがない時代だったが、政府は独立の対策組織を作った。政府、製薬業界、市民、学会、医療関係者からなるワクチン政策決定組織(ACIP)だ。会議はすべて公開で、提言はそのまま採用され実施される。 接種時の注意書きには、副作用までが記されている。責任者は「集団の免疫レベルを高めれば感染を封じ込めることができる。それがアメリカの戦略だ。予防接種は個人だけでなく、社会を感染症から守る」という。

   いいね。訴訟に怯えて道を見失った厚労省とのなんという違いか。しかし、問題世代の男たちをうながす言葉はありそうだ。「妻と子、嫁と孫を風疹から守れ。お前は感染源になりたいか?」

ヤンヤン

NHKクローズアップ現代(2013年5月9日放送「風疹大流行~遅れる日本感染症対策~」)

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