<報道の魂「君によりそって~北海道生まれ『君の椅子』の7年~」>
生まれてきてくれてありがとう!誕生祝って椅子贈る過疎の町の「命のつながり」

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   北海道上川地方の愛別町は、人口およそ3000人という過疎の町だ。古くから林業などが盛んで、最盛期は1万6000人の町民を有した。この町では赤ちゃんは「宝」だ。生まれた赤ちゃんを花火を打ち上げて町民で祝う。さらに、7年前から新たな祝福のイベントがある。それが「君の椅子」だ。

   愛別町に生まれた赤ちゃんはみな、名前、誕生日、通し番号の刻まれた「君の椅子」を町から贈られる。1脚3~4万円もする高級品だ。過疎の町にとっては少なくない出費だが、この椅子を通じて町ぐるみで赤ちゃんを祝い、子どもの成長を逐一刻めると思えば、それ以上の価値がある。旭川大学の磯田教授らの提案を元に始まった「君の椅子」はそんな思いが込められている。

椅子とともに成長する子どもたち

   「前はちょっきりだった!」と話す7歳の男の子の椅子には無数の傷、少し前に流行ったアニメのシール、クレパスでのいたずら書きの跡がつやつやと残る。兄弟のいる家庭では、それぞれ年ごとにデザインの違う椅子が並ぶ。綺麗な白木に角のない丸みをおびたデザインはどれも可愛い。赤ちゃんが嬉しそうに椅子を噛んだりなめたりしようとするのも微笑ましい。

   このプロジェクト、実はいま各地に広がっている。磯田教授らは2011年12月、岩手県宮古市にいた。2011年3月11日に、この世に生まれた被災地の赤ちゃん104人に「君の椅子」を贈るためだ。宮古市に住むさくらちゃんは大震災が起きる数分前に生を受けた。お母さんと看護師さんらに守られたさくらちゃんは無事生き延びたが、浜付近に働きに出ていたさくらちゃんの祖母は津波でなくなった。だから、さくらちゃんのお母さんには迷いがあった。

「誕生日は(実母の)命日、祝っていいのかな」

   だが、「それでも、前を向いてほしい」という思いを込め、磯田教授らは被災地の赤ちゃん104人に贈る椅子を「『希望の』君の椅子」と名付けた。2歳になり「君の椅子」を引きずって歩くさくらちゃんからは明るい生のエネルギーがふつふつと伝わる。

しみじみ感じる赤ちゃんは「未来への希望」

   多用されるお母さんと赤ちゃんの手のアップ、なめらかな木に顔を寄せたり、握って開いてを繰り返す赤ちゃんたち。ナレーションよりもずっと雄弁な「希望のかたまり」っぷりはため息ものである。なんであんなにふくふくしているのか、なんでこれほど邪気がないのか。「〇〇くんの椅子に座って見せて」とスタッフに言われた3歳の男の子が、「こっちのがいい」とお母さんの膝に腰掛けるなんて、可愛すぎて3回くらい巻き戻しました。「お父さんが作ってくれたの」と一生懸命お話してくれる家具職人宅の坊やも、ツボです。

   育つと言うことの尊さと、「子どもは希望」というメッセージはどれだけ使い古されても古びないということを痛感する30分でした。…内なる母性本能を引きずりだされずにはいられない危険な作品だということも追記しておきたいと思います。(TBS系6月2日0時55分~)

(ばんぶぅ)

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