富士山世界遺産登録で心配な「山崩壊」「観光優先」「環境汚染」諮問機関も警告

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   富士山がユネスコの世界遺産に登録され、地元の静岡県や山梨県の関係者は大喜びだが、新たな課題も浮上した。国谷裕子キャスターは「ユネスコの諮問機関であるイコモスは、開発に対する制御や来訪者を管理していく戦略が必要だと指摘しています。大きな宿題も抱えています」と伝える。

年間30万人の登山客。「駐車場ないのにマイカー押し寄せる」(五合目土産物店)

   夏の富士山は観光登山客であふれかえる。登山道にはテーマパークの人気アトラクションのような列もできる。夏シーズンだけでも年間30万人が山頂を目指す。山頂に通じる5合目の土産物店店主は「ここには正式な駐車場がありません。これ以上登山客が増えて、ここに車を置かれたら大変なことになります」と危惧する。

   国谷「イコモスはこの状態を放置すれば、いずれは山が崩壊すると指摘しています」

   山頂付近で山荘を運営する経営者は「登山者から入山料を徴収するしかない。入山料を取ることで、その数を何とか抑制する必要がある」と語る。

   イコモスの宿題は富士山本体だけではない。世界遺産富士山を構成する山中湖はモーターボートやジェットスキーが湖面を走り、何隻もの遊覧船が行き交う。イコノスはエンジン付きボートも周囲の景観にそぐわないと指摘している。国谷は「山中湖がある山中湖村の村民の約7割が観光業に携わっています。こうした村民の生活にも大きな影響を与えそうです」という。

   観光船の運航を生業としている責任者は「エンジン付き船がダメだというなら、これから私たちはどう生活していけばいいのか」と納得できない表情を浮かべた。

ふさわしくなくなったと認定されれば登録抹消

   国谷はゲストの日本イコモス副委員長の国士舘大・岡田保良教授に「イコノスは景観と自然保護、そして観光との兼ね合いをどう付けるかを問いかけているのではないでしょうか」と聞く。

   岡田教授「富士山世界遺産登録は、富士山を中心にその周辺25か所が含まれています。これはとても珍しい例で、従来ならばここまで広範囲に登録を認めるということはありません。ですから、地元でもこれからどうしていいのか戸惑いが広がっていると思います」

   国谷「そうしたとき、その柱として何が必要でしょうか」

   岡田教授「世界遺産登録は三保の松原や山中湖など多くの構成要素から成り立っています。それらを全体としてどう自然環境や景観を保持するのか、その計画をしっかり立てることが必要です。

   今後数年間は登山客も増え、開発圧力も強くなるでしょう。その時、地元自治体も含め国がどう対応するか。時にはイコモスも巻き込んで議論すべきです」

   世界遺産に登録されたものの、その後にふさわしくない状態になったら抹消もある。観光でボロボロにされて、富士山がそうならないことを願うばかりだ。

ナオジン

NHKクローズアップ現代(2013年6月24日放送「世界遺産 富士山は守れるか」)

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