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最新技術は生き物に学べ!クモの糸は細いのになぜ強い?ヤモリは天井からなぜ落っこちない?

   見るからにすぐ切れてしまいそうなクモの糸だが、この糸を模倣して次の時代を担う新しい繊維が誕生するかもしれない。内多勝康キャスターは「厳しい生存競争の中で生物が進化させてきた機能を模倣する、バイオミメティクス(生物模倣技術)の研究が進められています。蚊の針からは痛くない注射針が開発されています」と説明する。

クモの糸「ナイロンより高い伸縮性。鋼鉄の4倍強度」

   クモの糸は柔らかい部分と固い部分が合体し、強さと伸縮性に優れている。同じ太さなら鋼鉄製の糸の4倍の強度、ナイロンより高い伸縮性を併せ持つ。これを使えば炭素繊維より軽くて強い自動車や航空機のボディーを作ることができる。千葉大学ではハチドリやヤモリの足の研究をしている。ヤモリはなぜ垂直の壁や天井を平気で歩き回れるのか。足の裏に特殊な密着機能があるからだ。「ヤモリの足を観察して開発されたヤモリテープは、強く接着するのに簡単に剥がすことができます」と内多は伝える。東大ではアワビの貝殻からタンパク質を検出する研究が進んでいる。

   内多「こうした背景には、電子顕微鏡、ナノテクノロジー、バイオテクノロジー、ハイスピードカメラなどの発達があります。生物の神秘のメカニズムを分子レベルで解明、再現できるようになりました」

欧米に遅れる日本の「生物模倣技術」

   先月20日(2013年6月)に開かれたある研究会の模様が紹介された。この研究会には昆虫学や動物学の研究者と工学系の技術者約200人が参加したが、その連携はまだ弱く連携の強化が呼びかけられた。日本でバイオミメティクスによる新材料などの研究に、国は約10億円の予算を付けているが、欧米に比べれば微々たる額だ。「ドイツでは年間に3000億円が研究のために投じられています。日本は官庁が縦割り組織であるため、横の連携が弱かった。それが欧米に遅れを取った原因です」(科学技術ジャーナリスト・赤池学氏)

   内多「今後、日本のテーマは何になるでしょうか」

   赤池「生物との共生を見直す必要があるでしょう。生物が持つ自然の力は省資源や省エネに繋がります。日本独自のバイオミメティクスのスタイルを確立すること。それが重要だと思います」

ナオジン

NHKクローズアップ現代(2013年7月1日放送「生物に学ぶイノベーション~生物模倣技術の挑戦~」)